こんにちは、きなこぬこです。
今回は貴志祐介先生の「硝子のハンマー」を読んだ感想・考察についてまとめていきます。
防犯探偵・榎本シリーズの第1作目ですね!今作は2005年に日本推理作家協会賞を受賞しています!
2012年にはシリーズ3作目の「鍵のかかった部屋」のタイトルで榎本径役:大野智さん、青砥純子役:戸田恵梨香さんでドラマ化されています!
引用元:鍵のかかった部屋CM-2
あらすじ
株式上場を間近に控えた介護サービス会社で、社長が変わり果てた姿で発見される。日曜日であるにも関わらず社員たちは出勤しており、ビルには暗証番号付きのエレベーターや監視カメラがある。さらには、ビルの出入口では警備員が見張ってる。誰の目にも触れずにに侵入するのは困難であるにも関わらず、決定的な証拠も見つからず、扉でつながっている隣の部屋で仮眠をとっていた専務が逮捕されてしまう。弁護士としてこの事件を担当した青砥純子は、防犯コンサルタントである榎本径に調査の協力を依頼する。
以下はネタバレを含みます。
感想
明らかに犯罪者の探偵、異色でおもしろいですね!
有名なシャーロック・ホームズも「恐喝王ミルヴァートン」では相手の館に嬉々として忍び込んでますし、優秀な探偵は優秀な犯罪者たりえるのでしょうね。そして、今作は逆もまた然りであることを証明しています!
この作品は二部構成になっていて、前半が事件発生から調査、推理の展開に、そして後半が犯人の半生から種明かしまで、になっていましたね。後半は突然時代が飛んだので、何の話をしているのか気づくまでだいぶ時間がかかりました笑 榎本の過去の話かなと思ったくらいです笑
犯人の、何かを待つときに追加で1分待つ、という行動は榎本も全く同じことをしていたので、石橋をたたきまくって慎重に行動する二人の性格の共通点が描かれていましたね。だからこそ、犯人が綿密に計画した犯行を見破ることができるのは、榎本だけだったのでしょうね。
それにしても、榎本径は変わった人物ですね。
粗暴かと思いきや丁寧、淡泊かと思いきやキザ……1作目だけではキャラクターを掴みきれませんでした笑
青砥のことをちょっと気にかけているところも可愛らしいです。
今後の彼というキャラクターの掘り下げに期待ですね!
考察
タイトル「硝子のハンマー」の意味は?
純子が、犯人である佐藤学、もとい椎名章の事件から、若者について以下のように話しています。
社会を変革できるほど爆発的なエネルギーを持っているのに、ひどく傷つきやすくて、大人なら耐えられるくらいの、ちょっとしたことで壊れてしまう。……まるで、ガラス細工の凶器みたいに。
純子は若者のことを硬いけれど衝撃を受けると簡単に砕けてしまう、脆い硝子に例えていますね。
これに対し、榎本はガラス細工の凶器=ガラスのハンマーと例え、脆く壊れやすいものだとしても、その硬度は人を殺すには十分であると返しています。
今回のトリックでは、防犯ガラスに遊びを作り、そのガラスに被害者の頭を押し当てて衝撃を加えることとで、被害者の頭へ衝撃波を伝える、という方法がメインのトリックになっています。
硝子のハンマーで被害者の頭を殴った、というのとは少し異なりますが、被害者はガラスに殴られたようなものですし、このトリックはガラスを使ったハンマーと言えるでしょう。
以上のことから、「硝子のハンマー」というタイトルは、犯人である椎名章の脆くても人を殺す程度には硬い殺意と、ガラスを用いたトリックの2つの意味が含まれていたのです!
……タイトルが最大のネタバレ要素になっていますね笑
榎本は何者?
かなり異色の犯罪を犯す探偵ですね笑
シリーズ1作目で彼の明晰な頭脳や几帳面さ、大胆さが存分に描かれていましたが、結局何者なのか分かりませんでした。
何となくですが、逮捕された椎名章の境遇や生い立ちに同情していないわけではなさそうな感じがしました。
椎名がトリックを見破られてうなだれる場面で、榎本が独り言のように言った「人を殺してしまったら、終わりなんだ」という言葉がひっかかります。これは、椎名や同席していた純子に向けて言ったのではなく、自分自身に言い聞かせているような言い方だなと思ったんですよね。
もしかすると、榎本は椎名の境遇に似た立場なのかもしれません。そして、自分自身には何があっても殺人の一線を越えてしまってはいけないんだ、と言い聞かせているように見えたのです。
1作目だけの情報だけでほとんど榎本の素性を推測することはできませんが、少なくとも椎名と同様に過去に辛い経験をしてきたのではないか、と予想しています。
今後榎本が掘り下げて描かれるのが楽しみですね!
まとめ
いかがでしたか?
今回は貴志祐介先生の「硝子のハンマー」についてまとめさせていただきました。
最後まで読んでいただいてありがとうございました!
コメント
[…] […]
[…] […]