こんにちは、きなこぬこです。
今回は東野圭吾先生の「沈黙のパレード」を読んだ感想・考察についてまとめていきます。
今作はガリレオシリーズ9作目ですね!「容疑者xの献身」、「真夏の方程式」と同じく湯川学役:福山雅治さんで、前作から9年ぶりに映画化されました!
引用元:【主題歌KOH+】『沈黙のパレード』予告<9月16日(金)公開>【最新映像】
映画「容疑者xの献身」
映画「真夏の方程式」
こちらはガリレオリーズの特設サイトです!
あらすじ
3年前に失踪した並木沙織の遺体が、失踪した場所から遠く離れた静岡の家事が起こった家から見つかった。犯人として沙織の実家である料理屋「なみきや」に以前来ていた蓮沼寛一を逮捕するが、23年前の少女殺害事件と同じように蓮沼は黙秘を続け、釈放されてしまう。係長になった草薙はどちらの事件にも関わりがあったが、二回とも不起訴になったことで悔しさを感じていた。そんな中沙織の地元菊野市でのお祭りのパレードの日に蓮沼が死亡する。事件を捜査するうちに、湯川がなみきやの常連であることが分かる。
以下はネタバレを含みます。
感想
今作は、前作から長い時間を置いて発売されていたみたいですね!確かに前作の最後でゆかっわはアメリカに行った描写がありますし、作中でも4年の月日が流れ、湯川は教授に、草薙は係長にそれぞれ昇進しています。今回彼らが会って話をするのが慣れ親しんだ研究室ではなく菊野市の湯川の研究室やカフェ、バーになっていて少し寂しいような気もします。
今回は湯川が以前にも増して積極的に捜査に協力しているのが意外でした。研究室にいる湯川に困った草薙が行き詰った事件について相談にきて、話をきくと興味を持ってしまい渋々協力する……という定番の流れがこのシリーズにはありますが、今回の湯川は自分から首を突っ込んでいました。まさか続けて殺人事件が起こるとは思わなかったでしょうが……笑 とはいえ、草薙や内海が話すように、アメリカに行ったことで湯川に何かしらの変化があったのかもしれません。草薙本人に直接言ったりはしませんが、作中で湯川ははっきりと「親友の悔しい思いを晴らしてやりたかった」と話しています。それも本心なのでしょうが、個人的には、アメリカに行って疎遠になったことで、多少なりとも草薙や内海が持ち込む厄介ごとに対して、湯川自身が思っていたより楽しんでいたことに気付いたのかもしれないなぁと妄想したりしています笑 もちろん事件に関わることでたくさん辛い思いをしたりしたでしょうが、彼の知的好奇心を満たす事件を持ち込む彼らのお陰で刺激にはなっていたのではないでしょうか。
高垣が自供してからの怒涛の展開やどんでん返しはおもしろかったです!
考察
法では裁けない「沈黙罪」、元ネタは?
今回タイトルになっている「沈黙」という言葉が、物語に大きく関わってきます。
偽証罪というのはありますよね。では沈黙罪というのはあるんでしょうか。
菊野市の書店の娘が草薙に言い放ったこの言葉こそが、作品を通して読者に投げかけられた問いだったのではないかと思います。それにしても「沈黙罪」っていう造語、良いですね笑
簡単に蓮沼の経歴を確認していきます。警察官である父の話から警察にとって自白が大事な証拠となることを学んでいた蓮沼は、23年前の少女殺害事件において逮捕され起訴されたものの、沈黙を続けることで無罪となります。時は経ち、蓮沼の義理の母の家が火事になったことで、3年前に失踪した並木沙織の死体が発見され、状況証拠から逮捕されますが、今回も黙秘を続けて起訴されることなく釈放されます。
蓮沼が行使したのは皆様ご存知の通り「黙秘権」です。黙秘権は日本国憲法で以下のように保障されています。
何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
日本国憲法 第38条1項
憲法でこの権利が保障されているため、刑法等にもこれに準じた法律がきちんと制定されています。
いろいろ調べてみると、過去にもこの黙秘権が問題になった事件があったようです。1994年に起こった城丸君事件というものなのですが、この事件では1998年に逮捕された犯人が起訴された後も黙秘を続けて無罪となり、刑事補償を請求しています。この事件が、おそらくは今作の蓮沼が23年前に起こした事件の元ネタなんじゃないかと思います。詳細が気になる方は以下のリンクへどうぞ!
作中の事件では、町の関係者たちが「困難の分割」を行うことで、お互いのアリバイをフォローして、誰か1人だけが怪しく内容にし、捜査を攪乱しました。そして彼らも蓮沼と同じように、取り調べ室でも黙秘を続けました。沙織の恋人だった高垣が耐えられなくなったことで捜査が一気に加速しますが、高垣に関しては後で話していこうかと思います。
以上のことから、作中の黙秘権が問題となった事件には元ネタがあり、作中の事件を通じて黙秘権は「沈黙罪」にはならないのかを読者に問いかけています。
高垣が沈黙を守れなかった理由は?
何人もの人が殺人に関わることで犯人が一人ではありえない程に複雑な事件となった今作ですが、中盤まで全員が全員口を堅く閉ざしていたため、捜査がなかなか進展しませんでした。そこで突破口となったのが、沙織の恋人だった高垣智也の自白でした。
何故彼が一番最初に沈黙を破ってしまったのでしょうか?その理由は、彼は現在を生きているからです。
今回は結果的に直接事件に関与することのなかった沙織の父のことは除外して考えていきます。
高垣はなみきやに通い、かつての恋人である沙織の死体が発見されたことにショックを受けながらも、自分のために仕事に打ち込んでいましたし、母の里枝からも沙織のことを忘れて生きていくように再三言われていました。沙織と付き合っていた思い出に浸るのではなく、今を生きようとしていたのです。
だからこそ、過去の恋人のために自分を犠牲にすることは、母のためにも自分のためにもできませんでした。
しかし、他のメンバーは違います。戸嶋は並木共に幼いころにやんちゃした思い出を大切にしており、悔しい思いをしている並木のためなら人生をかけてもいいくらいの覚悟を持って犯行の計画を立てていました。
そして、高垣と最も対極的だったのが新倉夫妻です。彼らが守るべきものは過去ではなく、今を生きているお互いでした。二人とも沙織のために動いたのではなく、夫は妻を、妻は夫を守るために行動したのです。そりゃ高垣と比べれば覚悟の重さが全く違ってきますよね。
手の込んだ犯行、その意図は?
元々の計画からは大きく変更になりましたが……本来は蓮沼を拷問のように苦しめて殺す予定でした。液体窒素を密室に流し込みながら、蓮沼に息苦しさを味合わせて殺すというものです。息が吸えなくなっていく恐怖は凄まじいものでしょう……
窒息死ですが、沈黙を続けてきた蓮沼に対してはピッタリの殺し方だったのかもしれません。急速に酸素がなくなっていく中で、喋りたい時にはもう息を吸えず言葉が出ない状況に追い込まれる……今まで自分の罪を頑なに認めずに口を閉ざしてきた彼にとって、窒息で死ぬというのは最大限の皮肉だなぁと思いました。
また、パレードの出し物「宝島」の小道具である五つの宝箱の中で、銀の宝箱を選んだのは、銀には悪に打ち勝つ力があるといわれているからではないかと思いました。彼らにとっての悪は町のアイドルだった並木沙織を殺した蓮沼であり、蓮沼を殺すため凶器を運ぶには最適な色だったとも言えます。
まとめ
いかがでしたか?今回は東野圭吾先生の「沈黙のパレード」についてまとめさせていただきました。
最後まで読んでいただいてありがとうございました!
コメント
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