「元彼の遺言状」の続編!玉子の価値観の変化と祖母の死について考察してみた!「倒産続きの彼女」新川帆立先生 ※ネタバレ注意

こんにちは、きなこぬこです。

今回は新川帆立先生の「倒産続きの彼女」を読んだ感想についてまとめていきます。

今作は第19回このミステリーがすごい!大賞を受賞した「元彼の遺言状」の続編ですね!前作で主役だった剣崎麗子も主役の座は譲っているものの大活躍しています!

特設サイトもあるので、以下にリンクを貼っておきますね!

あらすじ

祖母と共に暮らしながら弁護士として働いている美馬玉子は、 同じ事務所で働く剣崎麗子や古川と共に近藤まりあという女性を調査することになる。近藤が勤めた会社は全て倒産しているという匿名の投書があり、現在勤めているゴーラム商会も倒産目前の状況下にあった。調査を始めた玉子たちだったが、偶然にもゴーラム商会の総務課長である只野の死体を発見してしまう。

以下はネタバレを含みます。

感想

最初の方は玉子がちょっと嫌な感じで、前作の主人公の麗子のことを目の敵にしていましたし、プライドも高いしであまり好きになれませんでした……ですが、今作での事件での出来事や祖母の死、冒頭で喧嘩した友人の美法との和解を経て変化した玉子は気が付けばとても魅力的なキャラクターになっていて、作品を読み終わる頃には玉子を好きになっていました!

前作同様に読みやすくて展開も早いのですが、それと同時に玉子という人物の掘り下げや成長が丁寧に描かれていて楽しめました!前作の麗子はとても心が強い女性で、お金が大好きというかなりインパクトがすごい設定でしたが、やっぱり少し遠い存在のように感じられてしまう人物でした。しかし、今回の主人公である玉子は、麗子よりも断然めんどくさい人物ではありますが、彼女が感じている生きづらさに共感できる部分も多く、読者に近いように感じられました!

もちろん、前作で大活躍だった麗子が今作でも活躍してくれたのはとても嬉しかったです!前作よりも麗子の分かりにくい優しさが描かれていたように思います。

このままシリーズ化して続編が出てくれたら嬉しいなと思います!

考察

最初の頃は麗子のように家庭環境や才能・容姿に恵まれた人物に勝手に劣等感を感じ、少しでも悪いところを探して優越感を感じようとしていたり、合コンをしても相手の男の人達や同席している友人を見下していたり、ブリっこしてみたり……玉子は正直嫌な女だなという印象でした。

彼女の生い立ちのエピソードや祖母の世話をしながら高速時間の長い過酷な仕事をこなしているということからも、かなり強いハングリー精神を持って生きてきたであろうことは分かるのですが、玉子という人物の中身が空っぽであることが気になっていました。何だか自分の中に価値基準がないような……

このように感じていた理由については、終盤で美法と仲直りをする場面で気づくことが出来ました。玉子は祖母がなくなって美法と仲直りをするまで、「誰かが勝手につけた序列」に自分を当てはめて周囲との優劣を判断していたんですね。だから、彼女自身の意志はなく、社会的に価値のある男性であれば持ち上げるし、自分より序列が上だと思った麗子の序列を少しでも下げる理由となるような荒さがしをしていたわけです。このことに玉子自身も気づいておらず、美法の指摘でやっと気づくことができた様子でした。この出来事が、玉子の価値観が変わるきっかけのひとつになります。

そしてもうひとつのきっかけが、共に支え合って生きてきた祖母の死です。言い方は悪くなってしまうのですが、玉子にとって祖母は共に生きてきた戦友であると同時に、他の同年代の女性と比較して自由を奪ってくる重荷でもありました。少しきつ言い方になりますが、祖母の面倒をみながら過酷な仕事をして頑張っている不幸でかわいそうな自分に酔っていたようにも感じました。そんなに頑張っている自分はすごいというのが、彼女自身のアイデンティティになっていたように思います。周囲に自分の不幸な生い立ちを語ることで同情されるのが嫌で、作中でも語れる不幸は不幸ではないと考えていた彼女でしたが、この言葉は世の中にあふれる不幸話の主人公たちよりも軽々しく不幸であることを口にしない自分の方が不幸であると、「不幸マウント」のようなものをとっていたのではないかと感じました。しかし、自分が不幸であることの理由として使っていた祖母が突然高いしてしまったことで、彼女の価値観は大きなパラダイムシフトを強いられることになります。自分の身に降りかかった不幸は全て過去の物となり、現在の自分が不幸であると納得するための理由を失ってしまうことになったのです。

玉子は祖母の世話する不幸な自分としてではなく何にも縛られない「美馬玉子」として一人で生きていかなければいけない状況になり、しかも今まで自分の価値判断の基準としてきた誰かが作った序列の無意味さに気付いてしまったのです。この2つの出来事が重なったのは偶然でしたが、玉子が変わるきっかけになります。

玉子は今回の近藤まりあに関わる事件を経て自分の価値観を見直したことで、自分がしたかった仕事は両親のように追い詰められて命を絶ってしまう人を助けることだと気付くことが出来ました。彼女は麗子ほどの心の強い人間ではありませんが、その分過去の自分の両親と同じ境遇で苦しみ、自ら命を絶つことを考えるまでに追い詰められている人間に寄り添うことのできる優しい人物です。他人との優劣を決めることや自分の不幸に浸ることよりも自分が本当にやりたかったことを知り、自分のためだけに生きる道を見つけたのでした。

最後に登場した干し柿を誰かのためにではなく自分のために作るという言葉は、これまでのように誰かの決めた価値観に嵌ろうとするのではなく、自分がやりたいことのために生きよう決めた心の変化を表しているのではないかと感じました。

まとめ

いかがでしたか?

今回は新川帆立先生の「倒産続きの彼女」についてまとめさせていただきました。

最後まで読んでいただいてありがとうございました!

前作の記事はこちら!

「元彼の遺言状」

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