【「一人称単数」村上春樹先生(ネタバレ注意)】あらすじ・感想・考察をまとめてみた!

日常

こんにちは、きなこぬこです。

今回は村上春樹先生の「一人称単数」を読んだ感想・考察についてまとめていきます。

日本の文学界の第一人者であり、ノーベル賞候補の村上春樹先生ですが…恥ずかしながら今回初めて読みました笑

英作文の問題なんかで出てきたイメージが印象的なのですが、婉曲的な表現が多いことは知っていたので何となく敬遠してしまっていて笑

ですが!

今回読んでめちゃめちゃ読みやすくて驚きました!

女性に対する表現は女性の視点からするとちょっと引っかかるところはありますが…

読みやすくておもしろかったです!

 あらすじ

*石のまくらに

昔一度だけ関係を持った女性が作った短歌を忘れられず、時折思い出す話。

*クリーム

知り合いの女の子の演奏会に呼ばれて出向いたものの、指定の場所では何も開かれておらず途方に暮れる話。

*チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ

学生時代、夭逝した天才音楽家の新しいレコードが出たという嘘の記事を書いた数年後、何故かそのレコードとアメリカで巡り合う話。

*ウィズ・ザ・ビートルズ

彼女の家に来たものの彼女がおらず、彼女の兄と共に人生について語る話。

*「ヤクルト・スワローズ詩集」

以前刊行した詩集の話。売れ行きは良くなかったが、今ではプレミアものになっているという設定。

*謝肉祭

綺麗とは言い難いがとても魅力的な女性と出会い、シューマンの謝肉祭について研究する話。

*猿

とある温泉宿に泊まりにいくと、そこでは名前を盗むことができる猿が働いていたという話。

*一人称単数

普段は着ないスーツを着て、バーへと出かけてみた話。

以下はネタバレを含みます。 

感想

読みやすく面白いのですが…年齢的に共感できる部分が少なかったかのように感じました。

私はまだ人生を振り返る気分ではなかったのかもしれません笑

また、他の村上春樹先生の作品を存じ上げないため、具体的に比較を行えず、村上春樹ファンの方々からすると非常に稚拙な考察になっていることでしょうが…感想なのでとりあえず感じたことを記しておこうかと思います。

村上春樹先生初心者の私の立場からですが、初めて読む作品としてはとても良いチョイスだったように思います!

読みやすく、性描写も聞いていたものに比べれば少なかったのではないかと。

短編であるため起承転結も掴みやすかったです。

これを皮切りに村上春樹先生の作品に触れていきたいなと思いました。

個人的には「ウィズ・ザ・ビートルズ」が一番好きです笑

考察

 人生のクリーム

「ぼくらの人生にはときとしてそういうことが持ち上がる。説明もつかないし筋も通らない、しかし心だけは深くかき乱されるような出来事が。そんなときは何も思わず何も考えず、ただ目を閉じてやり過ごしていくんじゃないかな。大きな波の下をくぐりぬけるときのように」

「クリーム」の中で主人公が過去の体験を年下の友人に話したときの言葉です。

今回の全編通じてのキーワードは、作中で主人公が上記のように説明する人生の中の”クリーム”について、それぞれ深めていく話だったように思いました。

この短編集の中の主人公は全員、一人称で登場し、終始視点が切り替わることはありません。そして全員、過去に対して想いを馳せています。

この想いを馳せる物・出来事こそが彼らにとっての人生の”クリーム”であり、一冊を通して過去の人生を”クリーム”を中心に振り返り、感慨にふける男性の様子が描かれています。

他人からみれば大したことではなく、わざわざ人に話すような機会に恵まれない。

でも、自分の心の中に深く刻まれ、今に自分の価値観を作り上げている土台となった物・出来事。

それこそが、ここで紹介されている人生の”クリーム”なのだと思います。

そういう、普段は言葉にしないけれど誰にでもある、表現しづらい出来事を文章で表しているのがとても面白いと思いました。

「歯車」の言葉の力

芥川龍之介の遺稿である「歯車」ですが、暗く鬱々とした独特の雰囲気のある作品ですよね。

私は読んだことがなかったのでこの作品を読んだ後に本屋に走ったのですが、読んでいて非常に心が重くなりました…笑

この作品の文章を引用している「ウィズ・ザ・ビートルズ」ですが、彼女の兄と会うまでは非常に瑞々しい青春を描いているのにも関わらず、その裏にいつでも顔をのぞかせている死を印象付ける表現として、これほどまでにインパクトのある方法はないのではないかと思いました。

物語は、その後別れた彼女は自殺してすでにこの世におらず、その事実を数年ごしに彼女の兄から聞くというショッキングな流れで進んでいきます。

事前に「歯車」を登場させることで、社会的に成功し何不自由ないように見える芥川龍之介の死と彼女の自殺を結びつける役割を果たしています。

彼女がどのような想いで命を絶ったのかは作中でも結論はでませんが、本人にしかわからない苦しみがあったのでしょうね。

そこに読者の想像の余地を残すことにより、物語にさらに深みが生まれているように感じました。

まとめ

いかがでしたか?

今回は村上春樹先生の「一人称単数」についてまとめさせていただきました。

最後まで読んでいただいてありがとうございました!

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