【「魔王」伊坂幸太郎先生(ネタバレ注意)】あらすじ・感想・考察をまとめてみた!

日常

こんにちは、きなこぬこです。

今回は伊坂幸太郎先生の「魔王」を読んだ感想・考察についてまとめていきます。

あらすじ

魔王

どこにでもいる会社員の安藤はある日、自分が念じたことを他人にしゃべらせることができる能力に気づく。世間では強いリーダーシップを持った若い新生政治家、犬養が躍進していた。周囲の人間が犬養を盲目的に支持する様子に違和感を感じた安藤は、この社会の流れに対して一石を投じようと考える。

呼吸

魔王の五年後、安藤の弟潤也が主人公の物語。犬養は首相まで上り詰めていた。潤也は東京から仙台に移住し、バードウォッチングを生業にして暮らしていたが、ここ数年自身の運が異常な程に良いことに気づいた潤也は…

ちょっとした特殊能力を持った安藤兄弟を主人公にした二つの短編が収録されています。

以下はネタバレを含みます!

感想

みなさんはサードウェイブ実験というものを知っていますか?

アメリカのとある高校で教師が一つのクラスの生徒を対象に行った実験なのですが、五日間疑似的にファシズムを体験してもらうという衝撃的な内容なのです。

実際にあった出来事で、この出来事を題材にした「ザ・ウェイブ」というドイツ映画もあります。(最後までスリリングで面白いですよ!)

私はこの映画でこの実験を知ったのですが、最初は統制なんてされるはずがないと思っていた生徒たちが見事に従順になっていく過程はとても恐ろしかったです。

この作品ではファシズムに走りかけている社会が背景にちらつきます。

小説内で人々が犬養に心酔していく過程が描かれていますが、誰でも絶対的なリーダーを盲目的に信仰してしまう可能性があるということがサードウェイブ実験からも証明されています。

自分は絶対に大丈夫、俯瞰的に物事を見ることができる、と信じていても、実際に犬養のような強い指導者が台頭したときに安藤兄のように疑問を抱くことができるのか…私は自身がありません。

とにかく誰かの意見を迎合するのではなく、自分の意志で、自分の力で考えることを意識しなければいけないなと思いました。

考察

タイトル「魔王」の意味は?

表題にもなっているシューベルトの「魔王」は、中学生のころに学校で学んで衝撃だったのを覚えています。

嵐の中館に向かう父と息子。息子は自分を狙い近づいてくる魔王に気づき、父に助けを求めます。しかし、父は魔王に気づくことができません。深刻に訴えてくる息子の様子にただならぬものを感じ館へ急ぎますが、時すでに遅し、息子は冷たくなっていた……という歌ですね。

普通に怖いです笑

何でこんな歌教えるんやと思ってました笑

宮沢賢治の「注文の多い料理店」も作中に出てきますね。

山奥にある料理店を見つけた二人の男が、店側からの注文が書かれた看板を見て言われた通りに進んでいき、最後に体にクリームを塗るときにやっと何かおかしいことに気づきます。

この作品に対し、安藤兄は「いつの間にか、ファシズムに巻き込まれる民衆と同じじゃないか」といいます。

「注文の多い料理店」だけではなく、「魔王」もファシズムに巻き込まれて気づかない民衆、そして気が付いたときにはもう手遅れという暗喩として用いられています。

二つの作品にはもう一つ共通点があります。

どちらも登場人物たちが状況を深く考えず、都合の良いように勝手な解釈をしていることです。

「魔王」では、魔王の姿を見て怯える息子に対して、父は木のことを言っているのだと考えてしまいます。

「注文の多い料理店」では、多くの店側からの注文に対して、全てはおいしい料理のために必要なことなのだろうと考えてしまいます。

このように、現実から目をそらし、自分たちの解釈を付け加えているのです。

そして、この勝手な解釈を「考えている」と思い込んでいるのです。

犬養からの挑戦状

上記で触れた宮沢賢治の「注文の多い料理店」ですが、この作品を読むように促したのは多くの盲目的支持者を持つ犬養本人です。

犬養を慕う人間ほど犬養の進めた書籍を手にするのではないかと思います。

そしてこのようにも発言しています。

私を信用するな。よく考えろ。そして、選択しろ

普通政治家が言う言葉ではないですよね笑

だからこそ作中でも得に際立つ発言です。

犬養は常に自分の支持者たちに呼びかけています。

本当に自分を信用していいと考えているのか。自分の頭で考えた結果なのか。

これを聞いた支持者たちは本を読みますが深く考えていないのでメッセージに気づきません。そして、「信じるな」という言葉に対しても「すごいことを言ったなぁ!」くらいにしか感じていません。

ですが、本の内容を考えてみると、支持者をバカにしているのがよくわかります笑

まとめ

いかがでしたか?今回は伊坂幸太郎先生の「魔王」についてまとめさせていただきました。

続編の「モダンタイムス」も楽しみです!


最後まで読んでいただいてありがとうございました!

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