【「毒入りチョコレート事件」アントニイ・バークリー先生(ネタバレ注意)】真実は一つじゃない?!あらすじ・感想をまとめてみた!

こんにちは、きなこぬこです。

今回はアントニイ・バークリー先生の「毒入りチョコレート事件」を読んだ感想についてまとめていきます。

「氷菓」で有名な古典部シリーズの2作目である「愚者のエンドロール」では、米澤穂信先生が今作をオマージュしたことを明言していますよ!

「愚者のエンドロール」米澤穂信先生の記事はこちら!

あらすじ

ロンドンの〈レインボー・クラブ〉に通うユーステス・ペンファーザーの元に、新製品のチョコレートの小箱が送られてくる。偶然にもその場に居合わせたグレアム・ベンディックスはそのチョコレートを貰って持ち帰り、妻のジョウン・ベンデックスへと渡す。そのチョコレートを食べたジョウンは死亡し、チョコレートからは毒物であるニトロベンゼンが発見された。警察が匙を投げたこの事件の真相を暴くため、ロジャー・シェリンガム率いる「犯罪研究会」の会員たちは推理合戦を繰り広げる。

以下はネタバレを含みます。

感想

多くのミステリー作品内や作家さんがこの作品について言及しているのを目にしていたので、ずっと気になっていた作品でした。

毒の入ったチョコレートを食べて殺害されるという事件自体は非常に単純な事件ですが、意図的に毒物を使うことにより確実に何者かが誰かへの殺意を持って行動していることは明らかですよね。1つの事件に対して登場人物それぞれの専門知識や人脈、思考方法を用いることで違った視点や道筋から真相を見つけようとします。

某少年の決め台詞は「真実はいつも一つ」ですが、会員たちがそれぞれ真相として提示する推理は全て論理的です。この小説内での会議では1人が披露した推理を犯罪研究会の他の全員が自らの調査によって得た論理を崩す証拠や情報を示すことで棄却し、次の人の推理へと移っていきます。誰か1人が探偵役を担っているのではなく、全員が探偵未満であるからこそ、この物語は六つの論理的な推理を乱立させることに成功しています。

しかし、多くのミステリーと同様に1人の探偵役が固定されている場合はどうでしょうか?論理的な穴を発見できない限り、探偵役が提示した筋が通っている推理だけが真相になってしまうのです。最後に推論を発表したアンブローズ・チタウィックも以下のように話しています。

その種の本の中では、与えられたある事実からは単一の推論しか許されないらしく、しかも必ずそれが正しい推論であることになっている場合がしばしばです。作者ひいきの探偵以外は、誰も推論を引き出すことができなくて、しかも探偵の引き出す推論は(中略)いつも正解に決まっています。

この言葉に加え、推理の穴を指摘する人物が存在しなければ探偵役になれたはずの人物が作中に六人も登場することからもこの作品が1人の決められた探偵が真相を提供するだけの探偵小説に対するアンチテーゼとしての立場をとっていることが分かります。探偵が1人しか存在しないミステリーで探偵が提示すれば真相となりそうな推論を乱立させていくことで、探偵が示した解決が本当の解決であるかを証明できないということを指摘している有名な後期クイーン的問題の第一の問題を提起しているのかなと思い、非常に面白かったです!

まとめ

いかがでしたか?今回はアントニイ・バークリー先生の「毒入りチョコレート事件」についてまとめさせていただきました。

最後まで読んでいただいてありがとうございました!

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