こんにちは、きなこぬこです。今回は湊かなえ先生の「告白」を読んだ感想・考察についてまとめていきます。
今作は2008年週刊文集ミステリーベスト10で1位、2009年このミステリーがすごい!で4位を獲得しています。さらに第6回本屋大賞を受賞しています!今作の第一章「聖職者」は小説推理新人賞を受賞しており、今作が著者のデビュー作です。
2010年には森口悠子役:松たか子さんで映画化されています。
引用元:YouTube
私は今回、「呪術廻戦」の作者である芥見下々先生とのスペシャルコラボカバーで購入しました!(2022年12月)ショッキングピンクも強烈なのですが、作中での重要アイテムである牛乳と女の子が芥見先生らしく禍々しく描かれているのが素敵ですね!
あらすじ
校内で愛娘を亡くした女性教師:森口悠子は、担任しているクラスのホームルームで中学生たちに対してある告白を始める。自身の教師という立場への考えや生徒たちへの想い、そして娘である愛美のプールサイドでの事故のこと……このクラスの中に娘を殺した犯人がいると告げた彼女の衝撃的な復讐と歪んでいく生徒たちの姿が、複数の視点から描かれていく。
以下はネタバレを含みます。
感想
タイトルの通り、各章で登場人物たちがそれぞれの視点から独白していく形で物語が進行していきます。時系列も互い違いにならないので読みやすいのですが、それぞれの主観で物語が進んでいくため、真実と巧妙に混ぜられた嘘を見抜きながら読み進めることが求めらるみたいです!ネット上でも様々な考察が飛び交っておりとても面白いので、気になる方はぜひ調べてみてください!(修哉の爆弾を森口は本当に母親の研究所に持っていったのか、HIVウイルス入り牛乳を世直し先生が差し替えたのは本当なのかなどなど……)
ちなみに私は今回それぞれの事象の真偽に関する考察ではなく、森口が目指した復讐について考察してみました。詳しくは考察で。
大切な娘を奪われた森口が教師としてではなく娘を奪われた母親として生徒たちに復讐していく展開に引き込まれ、一気に読んでしまいました!個人的には彼女が本当に牛乳にHIV感染者の血液を混入したか否かはあまり問題ではないと思っています。混入していてもHIVに感染させて苦しませることができますし、混入していなくても感染した可能性があるという恐怖を抱いて生きるという苦痛を与えることに成功しているため、復讐は達成されていると考えられます。とはいえ感染していないことを確認した修哉の爆弾を母の元に運んだことを考えると、人の命を奪ってでも復讐を成し遂げようとしていることから、血液を混入させたにはさせたのだろうと思っています。
森口の立場になった時、私自身はどのように行動するか想像してみると、少なくとも教師を続けられないのは確かですね……自分の娘を殺した人間と関わり続けるなんて心が壊れてしまいそうです。そして、森口と同じように出来るものならこの手で何とか復讐したいと考えてしまうかと思います。とはいえ、犯人の家族を巻き込むことは躊躇うかと思います。
最期まで教師として生きた世直し先生とは対極的に、聖職者であることを捨てた森口。絶対最初から更生なんかさせる気はなかったと思うんですよね笑
考察
森口が目指した「復讐」とは?
今作の第一章は教師である森口が、娘を殺した修哉と直樹の牛乳にHIV感染者の血液を混入し、HIVに感染させようとしたという告白して幕を閉じます。しかし、この行動は復讐の始まりに過ぎません。もしかすると、多くの考察サイトで言及されているように、そもそも牛乳に血液を混入していない可能性すら否定できないのです。そもそも本当に感染させたいなら、感染するかしないか分からない不確実な方法を取るでしょうか?牛乳に進行を抑えることはできても完治させることは不可能な恐ろしいウイルスを混入するという狂気に満ちた行動があまりにも衝撃的すぎてぼやけてしまっていますが、森口は本当はどのような目的で行動していたのか、どのような結果で森口の復讐は満足に果たされたのかを考察していきたいと思います!
牛乳に血液を混入したことを生徒たちの前で話したのは何故?
まず、何故牛乳にHIV感染者の血液を混入させたことを全員に聞かせる形で話したのか、というところに意味があるのではないかと考えました。感想でも書いた通り、実際に混入されていたか否かは問題ではありません。
もし本当に感染のリスクがある場合、別にクラス全員に伝える必要はないと思いませんか?実際、修哉と直樹の罪に気づいた森口はそれぞれとこっそり話し、事実の確認を行っています。二人が娘を殺した犯人であることをクラスに最初から言いふらしていないのです。ということは、犯人を吊るし上げることも目的だったのかもしれませんが、それ以外にも意図があったのではと推察できます。おそらくですが、牛乳のことをクラス全員の前で話したのは、HIV感染者の可能性のある二人をクラスから孤立させ、居場所を奪うためだったのではないでしょうか?
居場所を奪われた二人は実際、家に閉じこもって不登校になったり、クラスメイトたちからイジメを受けたりしています。おそらくはこれらの状況を作り出すための手段でしかなかったのではないでしょうか?森口の目的はこれらの状況を作り出した先にあったのだと思います。
第二章でミヅホが言っているように、森口は教師としてしっかりと生徒たちと向き合って接していたのかもしれません。そして、個々の性格や家族関係を把握していた可能性があります。そうなると、マザコン気味の直樹は最終的には必ず母を頼ったでしょうし、プライドが高く承認欲求が強い修哉はイジメに屈せず登校するか不登校になって間違った方法であっても周囲を見返そうとすることを予想することは難しくなかったでしょう。
反省させるため殺人
追い詰められた結果、直樹も修哉も自身の母を殺害するに至ります。修哉にいたっては同級生も殺害してしまいます。
直樹が引きこもるルートを作った森口は、その後は見守るしかありません。そしてメンタルが弱そうな直樹の母が意外にも息子の引きこもりを受け止めているところに、ウェルテルという強力な刺客を送り込みます。森口が裏で糸を引いていたとはいえ生徒に寄り添わず、自分のなりたい姿しか見えていない……彼が確実に直樹とその母を追い込むように仕向けました。どちらがお互いを殺そうと、そこは問題ではなかったのでしょう。母が子を殺せば母も死ぬつもりでしたし、子が母を殺せば猛省し殺人犯として捕まります。
修哉の方はより追い詰めるのが難しそうでしたが、結果的には彼が最も自分を見てほしいと願っている母を自らの手で殺させるように細工しました。
以上のことから、森口の娘を殺した修哉と直樹に対する復讐は、マザコンの彼らが最も愛する母を自らの手で殺させることで完成することが分かります。これにより①愛する者を奪われる苦しみと②自らの手で人を殺すことによる罪の意識を背負わせることに成功するのです。
①は森口の気持ちを味合わせるため、②は娘を殺したことに対する罪の意識を自覚させるためではないかと思います。まぁ、これでも痛めつけ足りないと考えてるかもですけどね笑
まとめ
いかがでしたか?今回は湊かなえ先生の「告白」についてまとめさせていただきました。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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