こんにちは、きなこぬこです。今回は夕木春央先生の「方舟」を読んだ感想・考察についてまとめていきます。

あらすじ

大学時代の友人や従兄妹の翔太朗と共に打ち捨てられた地下建築「方舟」を訪れた柊一は、偶然道に迷って合流した矢崎一家と共に「方舟」で一晩過ごすことになる。しかし、翌朝の地震によって「方舟」の出入口が塞がれてしまう。脱出する方法はただ一つ――誰かひとりが犠牲になって出入口を塞ぐ岩を巻き上げ機で動かすこと。さらには地下から水が入り込み「方舟」が水没するまで時間がない。そんな状況下で友人の一人が死体で発見される。タイムリミットが迫る中、殺人犯を見つけだして「方舟」から脱出することができるのか!?

以下はネタバレを含みます。

感想

SNSで話題になっていたので気になって急いで読みました!帯の推薦文も有名なミステリー作家さんがズラリと並んでいて、帯を読んでいるだけでもワクワクしてしまいます!序盤は展開がゆっくりで読み進めるのが少ししんどく感じてしましましたが、ラストの謎解きから一気に盛り上がり、さらにはラストにも衝撃が――!話題になるのも納得の衝撃的などんでん返しで、最終的にはかなり面白かったです!

犯人の動機は生き残ることなのでは?と何となく予想はついてしまったのと、スキューバダイビングのセットが最終的にどこかで活かされるそうな気がしていましたが、犯人の予想以上の冷静さと仲間を差し置いても生き残ることへの執着には心底驚きました……

舞台となる地下建築の名称は『方舟』で、タイトルも「方舟」でした。聖書のノアの方舟のエピソードを鑑みると、生き残るのは方舟に乗ったノアたちなので『方舟』に残ることを選択した麻衣が助かるというのは、タイトルが一番のネタバレだったのかもしれませんね笑

考察

中盤での主人公と麻衣の会話での以下の麻衣の言葉がとても印象的でした。

愛する誰かを残して死ぬ人と、誰にも愛されないで死ぬ人と、どっちが不幸かは、他人が決めていいことじゃないよね

犯人だった麻衣と主人公は互いに惹かれ合っている描写がありました。そして、麻衣は犯人なので愛する主人公を残し、かつ主人公からも愛されずに死を望まれて死んでいくかのように見えました。しかし苦しみながら死ぬことになる麻衣を憐れに思っていた語り手である主人公から見た麻衣の姿でしかなく、本当に愛する誰かを残し誰にも愛されずに死ぬのは主人公の柊一でした。愛する誰かを残して死ぬ人も誰にも愛されないで死ぬ人も不幸に見えますが、どちらも不幸であるか否かを他人が決められるものではないことが分かりますね。

このように、今作ではどちらが不幸であるのかを決めるのが難しい二者択一の選択を求められる場面が多くあり、それらの選択が主人公たちの運命を左右していきます。

麻衣は最後の最後まで、柊一が麻衣を選び、麻衣のことを愛して共に死ぬ選択をすることを待っていました。しかし、麻衣と自分の命を天秤にかけた結果、柊一は自分の命を選びました。そしてその選択は麻衣も自分の命のどちらも選ばない選択でした。

また、今作はデスゲームのようなクローズド・サークルでのミステリーであり、大人数が助かるためにひとりを生贄にして生き残ることを目的に殺人事件の犯人当てを行うため主人公たちは奔走します。これは殺人犯こそが死ぬべきであるという考えに基づいた選択でした。そして、全員が生き残りたいと願いながらも誰かひとりが犠牲にならざるを得ない状況において間接的にでも殺人犯を殺すことになる選択は、犯人を除く全員が納得して、罪のない人間を殺すよりも少ない罪悪感で、自らが生き残るために他人を殺すことができる選択でした。

しかし、最終的に生き残るのはいち早く全員が助かることは不可能であることに気付き、殺人を犯すことで自身が生き残るために周囲の人間を動かした麻衣だけです。気持ちが良いとは言い難いラストではありますが、助かろうとしていた麻衣以外の主人公を含む5人も麻衣を殺すことを選択していますし、生き残りたいと願う麻衣を悪者であると断じることもできません。

一見不幸に見える選択肢であったとしても、当人にとってはそうでない選択肢ばかりでした。何が正しい選択なのかは、当人以外には分からないということですね。

まとめ

いかがでしたか?今回は夕木春央先生の「方舟」についてまとめさせていただきました。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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