【「入れ子細工の夜」阿津川辰海先生(ネタバレ注意)】バラエティ豊かなノンシリーズ短編集第二弾!あらすじ・感想をまとめてみた!

ミステリー(国内)

こんにちは、きなこぬこです。今回は阿津川辰海先生の「入れ子細工の夜」を読んだ感想・考察についてまとめていきます。

今作は阿津川先生のノンシリーズの短編シリーズ2作目ですね!

あらすじ

危険な賭け~私立探偵・若槻晴海~

私立探偵の若槻晴海は、フリー記者の牧村真一が持っていた荷物の中身を探していた。純喫茶で荷物の入れ替わりが起こっていたことに気付き、牧村の荷物を持っていった男が持っていた古本屋の袋を頼りに周囲の古本屋を渡り歩く。

二〇二一年度入試という題の推理小説

2021年、新型コロナウイルスによって社会が一変し、K大は独自の新しい入試形式を考案した。それは、推理小説を読んで犯人当てをすることで論理的思考力を測るというもの。一般的な従来の受験を全く異なる新しい試みに振り回される受験生のひとり・Aくんは最初は戸惑うものの、試験のために読んだミステリーにハマってしまう。

入れ子細工の夜

ある小説家は書斎の扉を開き、金庫の前に編集者を名乗る若い男立っていることに気付いた。作家は男に新作のプロットに沿って演じることを頼む。こうして殺人犯と被害者を演じ始めたふたりの会話は、思いもよらぬ方向に進んでいく――

六人の激昂するマスクマン

公民会の一室で開かれた大学のプロレスサークルの会合に集まった各大学の代表は、それぞれリングで被るマスクをして会議に臨んでいた。しかしプロ入りが確定しているシェンロンマスクがなかなか現れない。そんな中シェンロンマスクのマスクを被って現れたのは、解説役の坂田だった。彼が言うには、シェンロンマスクは殺され、犯人は会議の参加者の中にいるという。荒ぶるマスクマンたちの犯人捜しの会議が始まる。

以下はネタバレを含みます。

感想

前作の「透明人間は密室に潜む」と同様にノンシリーズの短編を集めた一冊ですが、どの作品も変わった舞台設定で予想外の展開が描かれていてとても面白かったです!全ての短編についてのミステリー愛が溢れる作者の詳しい解説も勉強になりました!

「危険な賭け~私立探偵・若槻晴海~」は探偵がある男の足跡をたどるために聞き込みをしていく物語でしたが、最後のどんでん返しには驚きました!語り手である探偵こそが犯人であり本物の探偵は別に存在するという……まさしく信用できない語り手でしたね!『まだらな雪』を未読なため、犬が登場するエピソードがあると騙されてしまいました笑 しかもそのエピソードのおかげか犯人は心を開いてくれるという……犯人が本を読んだときにショックを受けるのではないかと心配になります……

「二〇二一年度入試という題の推理小説」受験生A君の日記やK大学の会議の内容を紹介することで情報を小出しにしながら展開し、メインのミステリーは入試問題として入れ子構造になっているという変わった様式でとても新鮮でした!しかもその問題が穴だらけで、論理的に筋の通った複数の解答が可能という……とはいえ、探偵役が語る真相が真の解決か証明できないという後期クイーン的問題の第一の問題が存在することから、ミステリーにおいて唯一絶対の解答を定めるのは不可能なのではないでしょうか?そのため、問題文に欠陥があるというよりはミステリーを入試に使うことが難しかったのではないかと思いました。思考の方向性が予め決められている穴埋めとかだったら問題として使用することも可能かも……?

表題作の「入れ子細工の夜」は、攻守が目まぐるしく入れ替わって振り回されてしまう面白い作品でした!登場人物が”小説家”と呼ばれているため混同してしまいますが、舞台が始まる前の段落において、これから描かれるのは小説家と呼ばれる人物が観ている劇もしくは映画などのフィクションであることが事前に分かるように「なんとしてもこの目で確かめなくてはならない」と書かれています。この一文から次に登場する書斎の扉を開く小説家とこの小説家は別人物であることが分かります。

こちらの作品も「二〇二一年度入試という題の推理小説」と同じく複数の解答が含まれている作品ですね!はたして、長い長い夜はいつまでも続くのでしょうか?もしくは全て夢なのでしょうか……

「六人の激昂するマスクマン」は前作に収録されていた、閉ざされた法廷でアイドルオタクの裁判員たちが自分たちで真相を探ろうと奮闘する「六人の熱狂する日本人」と同じく、閉ざされた会議室という空間でプロレスを愛する学生たちが仲間の名誉のために真相を追究する物語でしたね!どちらも大好きなもののために奮闘し、最終的に真相に辿り着いた上に閉ざされた空間であることを良いことに真相を外部には漏らすことなく終わるという共通した展開があります。彼らが興奮のあまり会議室なのにプロレスを始めてしまう姿は滑稽で面白いのですが、会議に参加している学生プロレス関係者という狭い人間関係の中で小出しにされる情報を基に少しずつ真相に迫っていく様子にワクワクしました!ぜひ「六人シリーズ」もっと読んでみたいと思いました!

まとめ

いかがでしたか?今回は阿津川辰海先生の「入れ子細工の夜」についてまとめさせていただきました。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

シリーズの他の作品はこちら!

前作 「透明人間は密室に潜む」

コメント

  1. […] […]

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