【「江戸川乱歩名作選」江戸川乱歩先生(ネタバレ注意)】各話のあらすじ・感想・考察をまとめてみた!

ミステリー(国内)

こんにちは、きなこぬこです。

今回は新潮文庫から出版されている江戸川乱歩先生の「江戸川乱歩名作選」を読んだ感想・考察まとめていきます。

実は……あまり江戸川乱歩作品を読んだことがなかったのですが、怖い雰囲気と推理小説のように伏線が張り巡らせられた緻密な構成が見事に融合していて、大ファンになってしまいました!

今回読んだのは新潮文庫の夏のプレミアムカバーバージョン!写真ではちょっと伝わりにくいですが、鮮やかな赤にキラキラした文字がマッチしたとてもかわいい表紙です!

あらすじ

石榴

探偵小説を愛好している警察官の語り手はある夏、信濃の山奥にある温泉で過ごす。そこで出会った感じの良い紳士の猪股氏と共に探偵小説について語らっていた。猪俣氏の問いをきっかけに、語り手は以前捜査に携わった興味ぶかい事件について話し始める。その事件は、頭が石榴のように真っ赤になるまで潰された死体が発見されたことから始まる。

押絵と旅する男

魚津からの帰り列車に乗り込んでいた語り手は、大きな荷物を持ち歩いている男見つけて興味を抱く。男に頼んで荷物を見せてもらうと、何とそれは非常に精巧な押絵だった。男から双眼鏡を渡され、押絵を見てみると不思議なことが起こる。

目羅博士

動物園で出会った男は、鏡を覗いていると鏡の向こうの自分も自分のことを猿真似していると話す。男はあるマンションの同じ部屋で、不思議なことに住人がみんな同じように首を吊って自殺してしまうことがあった話を語り始めた。

人でなしの恋

結婚して幸せの絶頂だった女性。 夫からの愛情も申し分ない。しかし、夫は毎晩自分に気づかれないように家の蔵に向かっていることに気がついてしまう。夫が蔵でこっそりと他の女性との逢瀬に勤しんでいると思った彼女は、蔵へ入る夫の後ろをこっそりと追いかける。

白昼夢

散歩で立ち寄った公園で、男性があまりにも熱心に話している様子を見てたくさんの人が集まっていた。その内容はまるで信じられないようなものであったが……

踊る一寸法師

一寸法師の緑さんは、狂った宴会に参加していた。その変わった容姿のせいで周りにやりたい放題される緑さん。しかし、どんなことをされてもニヤニヤと笑い続ける。宴会はどんどんおかしな方向へ向かって加速していく。

陰獣

博物館に行った小説家の語り手は、ある美しい人妻と出会う。彼女は語り手の小説のファンであり、すぐに打ち解ける。そんなある日、切羽詰まった様子の彼女から相談を受ける。なんと、結婚する前にお付き合いしていた男性が大江春泥という小説家で、その男に脅されているという内容だった。大江春泥は復讐するという内容の脅迫文を彼女に送りつけ、自身が小説の中で描いた内容の復讐を次々と実行していく。

ちなみに、巻末には先生自身の各話解説が載っていて、作者のそれぞれの物語に関するエピソードや発表当時に周囲の反応や本人の思いが分かって面白いですよ!

以下はネタバレを含みます。

感想

ひとつひとつ物語の後味が悪く、推理小説ように読者に頭を使わせるところもあり非常に読み応えがありました!

読者が頭を使っているというよりは、作者に頭を使わされている感覚がするのです……笑

また、この短編集に収録されている物語ですが、個人的にすべての作品の読後感がスッキリしませんでした笑 ラストで全ての種明かしをしてくれなかったり、想像をはるかに超える狂気に絶句してしまったり、ラストに自殺してしまったり……

ですが、不完全感を残すことによって考察の余地があり、どのように捉えるのかを読者に託しているように感じます。また、後味が悪いからこそ心に留まる印象的なラストになっているのでしょうね!

忘れっぽい私は、どんなにおもしろかった作品でもしばらくするとオチを忘れてしまったりするのですが、江戸川乱歩の作品には忘れられないようなインパクトを与えてくるラストが多くて驚きました。

考察

江戸川乱歩は面白い!

「乱歩作品を大して読んでもいないくせに面白さを語るな」と思われるかもしれませんが……ここでは初めて読んだからこそ感じた乱歩作品の面白さを書いていこうと思います笑

ずば抜けた犯罪者には、その相手役として、優れた探偵が必要なのです。

これは「石榴」の中で登場する一節ですが、「陰獣」の中でもこの言葉が含む意味が表現されています。

犯人にとって自分が思うようにトリックを解いてくれる人間が存在することで、犯罪を犯す際に自分の立場が危うくなるのではなく、逆に安全に殺人を行うことが可能となるのです。事件を解こうとして推理を組み立てる人間が、真実とはかけ離れた方向に向かってしまうことで、むしろ犯人が完全犯罪を達成するための手助けをしてしまうということですね。

これは物語内の話ではなく、作者から読者へのメッセージなのではないでしょうか?

一般的な推理小説と同じように、読者は物語の中に散らばるピースを集めて推理をし、物語に隠されている謎を解き明かそうとしながら読み進めますよね。でも、その行為こそが既に江戸川乱歩の術中に嵌っているんですよ……!

作者がくれたヒントはミスリードであり、その通りに推理していくと必ず矛盾が生じて論理が破綻してしまうのです!なので、謎がとけたと思っても全く安心させてくれません。そこから結末に至るまで二転三転してしまうんですよね!

この作者の掌の上で読者が良いように転がされてしまう展開伏線にまんまと踊らされる快感こそが江戸川乱歩作品の面白さなのではないかと思いました!

日常から非日常へ

収録されていた作品のほとんど(「踊る一寸法師」は特殊な設定だったので除きます)が、日常のちょっとした動作や場所が、非日常への入り口になっています。

鏡をみた時や双眼鏡を逆さに覗いた時の不思議な感覚が、物語のターニングポイントになっています。また、作品の舞台は列車内や博物館、散歩で訪れた公園、動物園など、身近な場所になっているんですよね!

不可思議で不気味な話であるのに、いつでもどこでもその非日常へと続く道があるみたいでドキドキしますね!

誰もが知っている場所で、誰もがいつも通り生活をしていたはずが、ひょんなことから非日常への入り口に迷い込んでしまうような物語ばかりで、読者も作品を読んでいるうちに非日常に取り込まれてしまいそうな錯覚に陥ってしまうのがおもしろいところですね!

まとめ

いかがでしたでしょうか?今回は江戸川乱歩先生の「江戸川乱歩名作選」についてまとめさせていただきました。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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