【「星を掬う」町田そのこ先生(ネタバレ注意)】あらすじ・感想・考察をまとめてみた!2022年本屋大賞ノミネート作!千鶴と母が求めたものとは?

日常

こんにちは、きなこぬこです。

今回は町田そのこ先生の「星を掬う」を読んだ感想・考察についてまとめていきます。

今作は2022年本屋大賞にノミネートされいます!町田そのこ先生の「52ヘルツのクジラたち」は昨年の本屋大賞を受賞していますね!

あらすじ

元夫の弥一から暴力を受けて金を巻き上げられ、自分を不幸だと思い自殺まで考えている千鶴。生活に困窮した千鶴は、22年前に自分を捨てて消えた母親と共に過ごした楽しい夏の思い出をラジオに投稿し、それをきっかけに母親と再会する。あの夏の真意を問いただそうと考えていた千鶴だったが、若年性認知症を発症した母は少しずつ記憶が失われていく。元夫から母と共同生活を送る恵真と彩子と共に暮らし始めた千鶴は、母との距離感を測りながら自分の人生を見つめ直していく。

以下はネタバレを含みます。

感想

なかなか読み進めるのが苦しい作品でした……

後半にかけて千鶴が大きく成長したものの、前半の千鶴があまりにも幼稚で、自分にとって不都合な出来事を全て大昔に自分を置いていった母が原因であると思い込んでいる姿があまりにも痛々しくて、とてもじゃないけど三十路の女とは思えない言動が目に余りました笑 個人的には全くかわいそうとは思えず、いつまでも自立できない痛い女だと感じました。

もちろん母に置いて行かれたことも、父と祖母が異常に厳しかったことも辛いことだったとは思いますが、そのことを20年以上引きずって生きているのってとても疲れると思うんですよね。千鶴と同じような境遇であったりそれ以上に辛い状況でも自立して生きている人間が大勢いる中で、千鶴が今さらどうしようもない過去に自分が不幸であることの責任を押し付けているのは周りの人のことが見えていないからなのかなと思ってしまいました。自分自身だけが誰よりも不幸であり、不幸な自分は周りに対してどんな言動をしてもいいと思っているような態度はかなりイラつきましたし、絶対に関わりたくないタイプの人間だなと思っています。

とはいえ、少しずつ見返りを求めない周囲の人の優しさを知ることで千鶴が成長し、母と向き合っていく過程には感動しました。特に、千鶴と恵真が窮地に立たされた瞬間に母が二人を送り出した場面は、自然に涙が溢れてきて止まりませんでした。作品の後の世界で千鶴が自分の力で人生を切り開いていくことを願っています。

考察

千鶴と母

千鶴の母に対する思いについて説明する上で、語らなければいけない人物が2人の他にもう1人います。それは同居人の彩子の娘、美保です。美保は「捨てた側の人間」として登場しますが、物語中でもう1人の千鶴としての役割を果たしています。

美保は身籠ったものの彼氏にも父親にも祖母にも捨てられ、彩子の元に辿り着きました。そして、自身を捨てた側ではなく捨てられた側の人間であると言い張り、親である彩子がいなくなったことで自分は不幸になっているため、責任を取って面倒を見るべきであると主張します。

千鶴は、幼く、視野の狭さから母に捻くれた感情をぶつけ、不幸は母のせいだけではないことに気付けていない美保の姿に自分の姿を重ねます。

辛かった哀しかった寂しかった、痛みを理由にするのって楽だよね。わたしもそう。誰かの――あのひとのせいにすると、自分がとても憐れに思えて、だから自分の弱い部分を簡単に許せた。仕方ないじゃない、だってわたしは小さなころに母親に捨てられたんだもの、って免罪符にもしてきた。

千鶴は美保と同じように、母に責任転嫁することで「かわいそうな私」が不幸なのは母が自分を捨てたことによるものと考え、自分自身にあるはずの原因を考えることもせず、思考停止してきました

以上が前半の千鶴の母への思いでしたが、この考えは少しずつ変化していきます。そして、母は自分を捨てたのではなく、自分が母を捨てていたことに気が付くのです。

自由に生きたいと願う母と共に過ごしたひと夏の思い出はその後の千鶴の人生の支えとなるものでしたが、千鶴は自由であることに疲れて母に帰りたいと伝えてしまいます。母の価値観を先に否定したのは千鶴であり、母と共にいることを拒否したのは千鶴だったのです。母は千鶴に自分の価値観を押し付けてしまわないように、千鶴に自分と同じように他人の価値観を押し付けられて生き辛い思いをさせるよりは、共にいないことを選択したのです。

千鶴は母に捨てられたことに劣等感を感じ、母に自分が不幸になったことの責任を取らせようとしていましたが、自分が本当に望んでいたことに気付きます。千鶴は母と共に過ごすこと、ひと夏の思い出のように楽しく過ごすこと、母に愛されているという確証を得ることが本当の目的だったのではないかと思います。

ラストでは認知症が進行してしまった母と穏やかにホームの一室で会話する場面が登場しますよね。少し悲しい気持ちになってしまうラストではありますが、きっと千鶴にとっては母と共に穏やかに会話をすることができる幸せなラストなのかもしれませんね!

まとめ

いかがでしたか?今回は町田そのこ先生の「星を掬う」についてまとめさせていただきました。

最後まで読んでいただいてありがとうございました!

2022年本屋大賞まとめ記事はこちら!

コメント

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