【「六人の嘘つきな大学生」浅倉秋成先生(ネタバレ注意)】あらすじ・感想・考察をまとめてみた!2022年本屋大賞ノミネート作!月の描写が成長の鍵?

こんにちは、きなこぬこです。

今回は浅倉秋成先生の「六人の嘘つきな大学生」を読んだ感想・考察についてまとめていきます。

今作は2022年このミステリーがすごい!8位2022年本格ミステリ・ベスト10 4位2021年週刊文集ミステリーベスト10 6位2022年ミステリが読みたい!8位にランクインしています!

さらには、2022年本屋大賞にノミネートされています!

あらすじ

急成長しているIT企業「スプラリンクス」の最終選考に残った6人の就活生たち。最終選考として6人がチームとなってディスカッションをすることを求められたため、6人で集まって面接の対策をしながらお互いの仲を深めていった。しかし、本番の直前に課題が変更されてしまう。その課題は、6人の中で話し合って1人の内定者を決めることだった。仲間だったはずが敵になってしまった彼ら。戸惑いながら当日を迎えるが、議論の最中にそれぞれに宛てた封筒を発見してしまう。その中には6人が隠していた裏の顔について書かれた告発文が入っていた。

以下はネタバレを含みます。

感想

嘘つき学生と、嘘つき企業の意味のない情報交換—―それが就活。

就活生は自分を少しでも良く見せるために良い面を強調して悪い面は隠しますし、企業側は「働きやすい」とか「仲が良い」とかの耳障りの良い言葉を並べて学生を呼び寄せますよね笑 作中に登場した上の言葉には激しく同意ですね……

就活の話ですが、就活中の人や就活未経験の人よりも、就活を経験済みの社会人にオススメの本かもしれません。ここまでデスゲームみたいな就活を経験したわけではありませんが、私もかなり就活時には精神的にきつかったので登場人物たちの辛さには共感できました。面接に落ちると人格の全てを否定されているような気分になりますし、内定が取れても本当にこれで良かったのかと思ってしまいますし……二度としたくないなと思っています。

それにしても、犯人が二転三転してなかなか当てられませんでした。確かに一番怪しいのは好青年の九賀ではありましたが笑 また、当時ディスカッションに参加していた人たちへのインタビューの最後に必ず人間性を疑うような言動をしている描写がありましたが、その言動の背景を知らないから悪いことをしているように思ってしまっただけで、本当は良いことをしていたというのもすごい伏線でしたね!作者にまんまと騙されてしまいました笑

考察

月の裏側、人の裏側

作中では月についての描写が何度か出てきますよね!

作中で最初に月が登場したのはディスカッションの前に6人で集まって使用していたレンタル会議室に波多野と嶌だけが残った時で、嶌が月が綺麗であると話します。しかし、その後の最終選考で6人が闘いう中、封筒によってそれぞれの秘密を暴露されていったことで、嶌は人を信じることができなくなってしまいます。当時をビデオを見返した嶌は、「いつ、この嶌依織は死んだのだろう」とまで考えてしまう程に、この2時間半の話合いは彼女の価値観を大きく変える出来事になってしまいました。

実際に調査された結果によると、月の裏側は表面に比べて起伏が大きく、クレーターの多さが目立つらしい。言ってしまえば、ちょっと不細工なんだそうだ。

数年後に当時の真相を知るために調査した嶌は、亡くなった波多野が遺した手記に書かれていた彼の上記の言葉に辿り着きます。最終選考に残っていた6人と同じように、月は裏側に汚い顔を隠し、見えないようにしていることが書かれています。封筒の中身によって告発された裏の顔=月の裏側に例えていますね。

どんなに月の裏側が汚いことを知ったとしても、普段地球から見ている月の美しさは失われてしまいますか?そんなことないですよね。どんなに裏側が汚かったとしても、月が美しいことに変わりはありません。しかし、嶌を始めとする最終選考の参加者たちはお互いの良いところをたくさん知っていたにも関わらず、封筒に隠されていた裏の顔を知っただけでその人の人間性を全て「悪」として判断してしまいました。本当はその人に良いところがあることには変わりがないのに。

善と悪との闘争は耐えずいたるところに支配している。善悪の彼岸は存在せず、ただ多いか少ないかである。

ヒルティ「眠られぬ夜のために」

上記の言葉のように、善悪はあくまで物事の一部分であり、どちらかしかないものではありませんよね。自殺に追い込むことや堕胎させることは社会的にも良いことは言えないでしょう。しかし、その裏にはそれぞれの事情があった様子であり、その行為だけを切り取って批判するのは短絡的であったことが物語の最後に分かりますね。

波多野が遺した手記を読んだ後に嶌が「信じられないほどに、月がきれいだった」と思ったのは、裏面が汚いことを知った上で見た月が一層綺麗に見えたということであり、すなわち かつての最終選考の時に死んでしまった「純粋に誰かを信じる嶌依織」が復活し人に見せられないような裏の顔を隠していたとしても、それも含めて他人の優しさを信じることができるようになったということなのではないかと考えました。

余談ですが、波多野の妹共に故人となった波多野のレンタルロッカーを掃除した時、嶌は波多野が嶌の罪を告発する封筒とスピラリンクスに送付することも考えていたことを知ってしまいます。未遂ではありましたが、もし本当に送付されていたら嶌は内定取り消しになっていた可能性もあります。しかし、その事実を知った嶌はショックを受けるのではなく、自然に笑みがこぼれます。ちょっと不思議に感じる場面ではありますが、他の最終選考に残った人たちのことを最後まで信じた「良い人」である波多野が、他人を貶めることを画策する「悪い人」でもあったことで、むしろ波多野の人間らしさを感じられたのかもしれませんね笑 そして、他人からの悪意に対して裏切られたと感じるのではなく笑って受け止められるようになっていることで嶌の成長が感じられる場面だなと思いました!

まとめ

いかがでしたか?今回は浅倉秋成先生の「六人の嘘つきな大学生」についてまとめさせていただきました。

最後まで読んでいただいてありがとうございました!

2022年本屋大賞まとめ記事はこちら!

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