こんにちは、きなこぬこです。
今回は先生の「噛み合わない会話と、ある過去について」を読んだ感想についてまとめていきます。
あらすじ
ナベちゃんのヨメ
大学時代のコーラス部で女子グループと仲良くしていたナベちゃん。その嫁が「ヤバい」との噂が聞こえてきた。後輩の定例コンサートに参加した時に友人たちと一緒にナベちゃんとその嫁に出会い、披露宴での余興を頼まれる。
パッとしない子
男性アイドルグループで活躍している高輪佑は、小学校教諭の松尾美穂にとって昔担任をしていた生徒のパッとしない兄だった。テレビ番組の母校を訪れる企画でやって来た高輪は松尾のことを覚えており、2人で話をすることになるが……
ママ・はは
住吉亜美は、友人のスミちゃんの引っ越しを手伝っている時に分厚いアルバムを見つける。そこにあった成人式の写真には藤色の振袖を着たスミちゃんとお母さんが映っていた。スミちゃんは母と教育、そして振袖について話始める。
早穂とゆかり
地元誌のライターをしている湯本早穂は、学習塾を経営している小学校の同級生である日比野ゆかりにインタビューすることになった。当日ゆかりに再会した早穂は、インタビューを始める前に責任を持って記事にすることを約束させられる。
以下はネタバレを含みます。
感想
この本に収録されている短編集では、過去に何かをしてしまった相手からの報復が全ての話で描かれています。過去に何らかのことを相手にしてしまっていた人物を加害者、話の中で報復を行う人物を被害者としましょう。この話の最も恐ろしいところは、加害者が全員無意識に被害者を攻撃していたことです。被害者から仕返しされて初めて自分の過去の行動が誰かを傷つけていたことに気付きます。だからこそ、読者にとってもこの物語たちを他人事のように捉えることができず、気づいていないだけで実は自分も過去に誰かを傷つけており、いつかその誰かからの報復があるのかもしれないと否応なしに考えさせられてしまいます。読者の誰もが加害者である可能性があるのです。
人間の記憶は信用ならないものだと言われていますよね。実際私自身も、一緒に旅行に行った人物とその旅行の話をしたら思い出話が食い違っていたり、学生時代の話もズレていたり……自分の都合の悪いことは綺麗さっぱり忘れてしまっていることすらあります笑 みなさんもありますよね……?そう考えると、私自身も短編に登場した主人公たちのように過去に誰かに対して危害を加えていたことを思い出せなかったり、被害者側との認識が違っていたりしていたとしてもおかしくありません。
とはいえ、被害者から報復を受けることは、加害者側にとっても今までの自身の行いを振り返る良い機会になるのかもしれませんね。もし無意識下に他人に嫌な思いをさせていたことに気付かなければ、また同じことを別に人に対してしてしまうかもしれません。
「ナベちゃんのヨメ」の主人公は他の加害者とは異なり、自分で過去の自分の行動を振り返りナベちゃんに何をしてしまったのかに気付くことが出来ていてすごいなと思いました。
私たちは、ナベちゃんのことを軽んじていた。もっというなら、舐めていた。
彼女がナベちゃんに対する態度について述べた文章ですが、これはこの短編集に収録されている作品に登場する全ての加害者に共通している被害者に対する態度なのではないかと思います。加害者たちは被害者たちを尊重せず蔑ろにしたり、自身の優位を保とうとしたりしていますよね。
過去の自分が誰かを気づ付けていないことを、心から願っています……笑
まとめ
いかがでしたか?今回は辻村深月先生の「噛み合わない会話と、ある過去について」についてまとめさせていただきました。
最後まで読んでいただいてありがとうございました!
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