こんにちは、きなこぬこです。
今回は原田マハ先生の「常設展示室」を読んだ感想・考察についてまとめていきます。
この本には絵画にまつわる6つの短編が収録されています!
あらすじ
群青 The Color of Life
幼い頃からアートが大好きだった美青は、ずっと夢見てきたメトロポリタン美術館の職員として働いていた。障害を持つ子供向けワークショップの準備に追われる日々だったが、ある時から視界に違和感を感じ始める。眼科に行くと近いうちに失明してしまうことを告げられショック受ける美青だったが、そこで出会った少女に衝撃を受ける。
デルフトの眺望 A View of Delft
父が亡くなった後、なづきは弟のナナオと共に父が最期を過ごした施設を訪れていた。仕事で海外を飛び回るなづきはこれまで家族を顧みることはほとんどなかったが、弱った父が病院で酷い扱いを受けていることを知って、今までどれだけ自身が父や弟に無関心だったのかに気付く。
マドンナ Madonna
大手画廊に勤務し海外を転々としているあおいは、1人で暮らす母からの電話には必ず出るようにしていたものの、大事な仕事の最中にかかってくるため少しうっとうしく感じていた。そんなある日、仕事で急いで出かけようとしている時に頼み事をしてくる母に対して声を荒げてしまう。
薔薇色の人生 La vie en rose
地方のパスポート窓口で派遣社員として働く多恵子は、ある日パスポートの発行にやってきた男性に心を奪われる。偶然にも男性の車で家まで送ってもらうことになった多恵子は、男性のこれまでの人生を知り、さらに興味を惹かれる。
豪奢 Luxe
美術が好きでギャラリーで働いていた下倉紗季は、絵画を買いに来た谷地に見初められ、関係を持つことになる。妻子持ちの谷地は紗季に優しく、多くのブランドものを買い与えてくれていたが、自分の現在の境遇に違和感を感じていた。ある時、絵に興味がないにも関わらず谷地が紗季の好きなマティスの絵を購入しようとしていることを知り、怒りを感じる。
道 La Strada
時代の寵児になりつつある貴田翠は、審査員として参加した美術賞の選考会で見た1枚の絵に衝撃を受ける。幼少期に兄と過ごした田舎の風景や学生時代に出会った露店の男のことを思い起こし、一本の道がどこまでも続いていく絵を描いた作者に強い興味を抱く。
以下はネタバレを含みます。
感想
この作品の主人公たちは絵と対峙した時に自らのこれまでの人生を振り返り、気付きを得ています。絵を見ることへの情熱を置いてきてしまったことや、家族との関係を蔑ろにしていたこと、母との絆、そして遠い過去の思い出を思い出し、今の自分を見つめています。大切な作品と向き合い絵をみるという行為は、ただただキャンパスに描かれたものを見つめているのではなく、自分の内面を見つめ直しているのと同義なのかもしれません。
個人的には「豪奢 Luxe」がお気に入りです。他の短編の主人公に比べ年齢が近いからかもしれません笑
高いブランドものに包まれて谷地に頼るようになってしまった紗季が、ポンピドゥーセンターで大好きなマティスの「豪奢」と向き合い、今の自分を見つめ直しています。
この世でもっとも贅沢なこと。それは、豪華なものを身にまとうことではなく、それを脱ぎ捨てることだ。
作中のこの言葉に胸を打たれました。贅沢なものを持ち得ながら、それを捨ててでも何かをやろうとする強い意志。そして着飾る必要はないと思えるほど自分に自信を持ち、信頼する。紗季が本来の輝きを取り戻し、自分が大切だと思うものを尊重し、変わろうとしている姿に感動しました。
私も短編に登場する主人公たちのように幼い頃から美術が好きですし、美術館という空間が好きでした。旅行に行けば必ずその土地に美術館に足を運びます。ですが、近場の美術館の常設展示は見に行ったことがないことに気付きました。
それぞれの美術館には常設展示があり、それぞれの美術館が所有する作品を展示していることは分かっていました。しかし、私が近くの美術館に足を運ぶのは特別展示の時のみのため、常設展示を見に行くことはありませんでした。
この作品を読んで、自分がとてももったいないことをしていたことに気付き、私も常設展示を見に行ってみようと思いました。なんとなく期間限定といわれると見に行ってしまうのですが、期間が限られておらずいつでも見に行くことができる作品の中も特別展示と同じくらい見に行って損はないはずなのです。次に行くときは私にとってかけがえのない作品になる一枚との出会いを期待しながら、常設展示室に入ってみたいと思います!
まとめ
いかがでしたか?今回は原田マハ先生の「常設展示室」についてまとめさせていただきました。
最後まで読んでいただいてありがとうございました!
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