孤城に籠った心を鏡が繋ぐ!作中で鏡が果たす役割とはについて考察してみた!「かがみの孤城」辻村深月先生 ※ネタバレ注意

こんにちは、きなこぬこです。

今回は辻村深月さんの「かがみの孤城」を読んだ感想・考察についてまとめていきます。

こちらは2018年本屋大賞を受賞していますね!

ずっと単行本しかありませんでしたが、ついに文庫本も販売されるということで、この機会にこの作品を手の取る方も多く現れるのではないかと思います!

コミカライズ版もありますよ!↓

あらすじ

中学1年生のこころは、入学早々スクールカースト上位の女子に目をつけられてしまったこころは、彼女に追い込まれ学校に通うことができずにいた。自己嫌悪感に苛まれ、母に申し訳なく感じながらカーテンを閉め切った家で過ごしていたこころは、ある日自室に戻ると部屋の姿見が光っていることに気づく。不思議に思い触れてみると、鏡を通り抜けて御伽噺に出てくるような巨大な城の前に出た。驚いたこころに声をかけてきたのは、おおかみの面を被った異様な姿の少女だった。

こころと同じように城に集められた同年代の5人と共に、城を自由に使って良い権利を与えられ誰か1人だけが願いを叶えられる鍵が隠されていることを説明される。それぞれも心に問題を抱えた仲間たちと共に過ごすこころの1年が始まる。

単行本

文庫本(上下巻)

以下はネタバレを含みます。

感想

登場人物たちの心情の表現が緻密で、共感してしまう部分が多々ありました。

読んでいて中学時代考えていたことや感じたことをぼんやりと思いだしましたね…

今思いかえすと恥ずかしく感じることもたくさんありましたが、個人的には楽しい中学生活でした。スクールカースト上位の人間では決してありませんでしたが笑

中学女子によくある、恋愛絡みのしょうもないいざこざなんかがリアルで当時を思いだしました…

今思えば「しょーもないな」と思えることでも、当時はすごく悩んで苦しんだのを覚えています。

中学生の時って学校生活が世界の全てみたいに感じていましたからね笑

この小説は登場人物たちの物語を描いているのですが、自分の昔を思い出して一緒に照れたり怒ったり喜んだり、感情移入することができて楽しかったです笑

ついついミステリーばかり読んでしまうのですが、こういう自分の心にも向き合う機会になる作品を読むのも面白いですね!

ちなみに、個人的には時間軸が違うことに結構早めに気づいてしまったので、ラストにあまり衝撃は受けられませんでした笑

序盤からヒントがたくさんあったので、中盤でパラレルワールドが否定された時に確定することができました。

しかし、「狼と7匹のこやぎ」という童話は知らなかったので最期までわからない部分もありました。

グリム童話なのですね!勉強になりました…笑

考察

おおかみさまの願い

今回は城という空間を作り出した存在は何なのかはとりあえずあまり考えないで話を進めていこうと思います笑

ただし、終盤に罰が始まった時におおかみさまが「私にもどうしようもない」と話していたことから、超常的な力を持った何かによる介入であり、城を作ったのはおおかみさまの望みだったとしても、それを叶えたのは彼女自身ではないということは分かりますね。

この城という空間は、おおかみさまにとってはたくさんの願いを叶えてくれる世界だったことがわかります。

1つ目は、成長したリオンと共に時間を過ごしたいという願いです。

彼女はリオンが幼いころに亡くなっており、一緒に学校に通うというリオンの夢を叶えることができませんでした。

成長したリオンと共に城に通い、同じ時間を共有する…おおかみさまにとって、本当なら得ることの出来なかったかけがえのない時間だったのでしょう。亡くなる前にリオンにも楽しかったことを伝えています。

リオンは少なくとも中盤までにはおおかみさまの正体に気付いていたのでしょう。

リオンはテーマが「赤ずきんちゃん」ではなく、自身と姉の思い出の童話に関係しているのではないかということにいち早く思い至っています。

クリスマスパーティの時にケーキを持参したリオンは、おおかみさまにもケーキを渡しています。

おおかみさまがいつもよりしおらしい反応をしたのは、母が作ったケーキを食べられる懐かしさと、リオンに正体が気づかれているかもしれないと考えたからかもしれないなと思います。

2つ目は、リオンの願いを叶えたいという願いです。

誰もに平等に機会を与えているように見えて、この鍵探しゲームは最初からリオンに圧倒的有利になるように設定されていました。

リオンの姉がリオンに繰り返し読み聞かせていた「狼と7匹のこやぎ」をモチーフにしています。

また、他のメンバーにはミスリードのために「赤ずきんちゃん」を異常に強調しています。

リオンにもみんなと同じように先入観を持たせてミスリードしていたわけですが、リオンが姉との思い出を大切にしているなら、鍵の場所を見つけ出す可能性が最も高かったはずでした。そして、実際鍵の在り方がわかっていたのはリオンだけでした。

この城は、リオンの願いを叶えるために作られたといっても過言ではないのでしょう。

鍵はアキを助けるため使ってしまいましたが、最後の後日談の話からもリオンの記憶を無くしたくないという願いをおおかみさまは叶えてくれたみたいですね!

また、リオンの日本の中学校に通いたいという願いから、日本の中学に通う同年代の友人をたくさん作ることができました。

孤城からの開放

かがみの入り口

何故入り口にかがみを選んだのかを考えてみます。

鏡は古来より、神秘的なものとされています。鏡の中に入る物語といえば、「鏡の国のアリス」が思い浮かびます。

映画「シャイニング」でも鏡は現実世界とは切り離されていく表現として巧みに利用されていますよね。

鏡は異世界に繋がっている感じしますよね笑

鏡は異世界への扉としてはよく使われる物かと思います。

しかし、この物語ではもう1つ意味を持っています。

ありのままの自分を映し出すという象徴としての存在です。

この物語の登場人物は、みんな現実世界で何かしら問題を抱えています。

しかし、それを周囲に相談したりすることができず、自分の心の中に抱え込んで1人で向き合ってしまったり、見て見ぬふりをしてしまっています。

しかし、この城のある世界で仲間に出会い、ぶつかり合いながらも過ごしていくことで、いつからか仲間の姿に自身を映し出し向き合い始めます。

心に抱えたままになっていた物をしっかりと自身の目で見つめて向き合い、それぞれ解決するために動き出していきます。

仲間の姿を見ることが自分の内面を映し出し、自身の姿を客観的にみる鏡としていたのではないかと思います。

こころの心

主人公であるこころの心理描写を中心に物語は進行していきますが、彼女の1年間での変化は他のメンバーと比較しても顕著です。

城に来た最初の自己紹介で、こころは周囲の様子を異常なまでに伺いながら自己紹介を行なっています。

この時の気持ちはめっちゃわかるんですよね笑

自己表現が苦手な子であることがこのシーンから分かります。

また、学校に行けなくなったきっかけの事件を誰にも話さず、両親に聞かれても話すことができていませんでした。

気付いてくれると期待し、自分からは行動を起こせないでいました。

それが終盤には、自分から自分にあった出来事を開示し、身勝手な手紙を渡してきたいじめの元凶と、それを援護する理解のない担任教師に、怒りを持つことができ、自分の言葉をぶつけます。

こころは城で仲間と過ごした1年間を経て、自身が作りあげ閉じこもってきた1人きりの城を開放し、そこに押し込めていた考えや思いをしっかりと他人に伝える力を得たのです。

かがみの向こう側での城で過ごした時間はこころの心を成長させ、内側から孤城を開ける鍵となりました。

しかし、孤城を開放するために欠かせない、外側からの鍵がこころの周囲にありました。

それが、自身と真摯に向き合い、認めてくれる存在です。

こころには母親と喜多嶋先生の2人が理解者となり、こころの思いを支えてくれました。

母親は最初はこころが学校に行かなくなったことに戸惑いを隠せない様子でしたが、根気強くこころに寄り添い、こころが闘っていることを知って共に闘ってくれました。

本当にいい母親だと思います。

そして、喜多嶋先生は、こころが闘い続けていたことを認め、闘わないという選択肢をこころに提示しました。

また、こころを1人の人間として対等に扱い、こころの選択を尊重する態度を示し続けました。

2人の存在はこころを成長させる大きな要因になっています。

他人を否定するのではなく、努力を認め一個人として尊重し、同じ方向を向いてくれる人が1人でもいることはとても素敵なことだなと思いました。

まとめ

いかがでしたか?

今回は辻村深月先生の「かがみの孤城」についてまとまさせていただきました。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

単行本

文庫本(上下巻)

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