こんにちは、きなこぬこです。
今回は知念実希人先生の「崩れる脳を抱きしめて」を読んだ感想・考察についてまとめていきます。
1.あらすじ
研修医である碓氷は、所属している広島の病院から、地域医療の実習として神奈川の療養型施設を訪れる。そこはできる限り患者の希望を叶える病院だった。頭に爆弾を抱えた若く美しい女性、ユカリと出会った碓氷は、彼女との関わりを通して過去の辛い思い出と向き合うことになる。
無事実習を終えて広島に戻った碓氷だったが、ユカリが命を落としたことを知る。彼女の遺志を探すため、初めての感情に戸惑いながらも奔走する碓氷がたどり着いた真実とは…?
以下はネタバレを含みます。
2.感想
無難に安心のエンドでしたね笑
二人が幸せになれてなによりです!
恋愛小説としては個人的には物足りなさを感じてしまいました…
というのも、碓氷の恋愛に対する思いが年齢を考慮すると少し幼稚に感じられてしまいまして…笑
戸惑いながらも真っすぐな姿はかわいいんですけどね笑
あと、物語の構成上仕方がないのですが、ユカリさんの碓氷への心情が描かれていないため、ラストが少し強引に感じてしまいました…
ですが、ミステリーとしては面白かったです!
入れ替わりネタは定番とはいえ、なかなか見抜くのが難しいですよね!
電子カルテが主流とはいえ、小さい地域の病院であれば紙カルテを使用していることもあるのかもなぁと思いカルテの件はあまり疑問を抱くことが出来なかったので、気づくことができませんでした…笑
3.考察
1.DNRと最期の願い
心不全の可愛いおばあちゃんが亡くなった時、碓氷はおばあちゃんがDNRであるにも関わらず心臓マッサージをしようとしてしまう場面がありますよね。
あれ、医療者としてはマジであり得ません。絶対にやってはいけないやつです。
急に状態が悪くなって亡くなってしまう可能性が高い患者さんは、このおばあちゃんのように蘇生をしてほしいか、それともしないでほしいかの意志を事前に確認していることが多いのです。
患者さんにとって彼らの尊厳を守るための権利なのです。
心臓マッサージも、除細動(電気ショック)も、気道を確保するための挿管も、患者さんにとってとても負担が大きい行為になります。
例え一命をとりとめることが出来たとしても、亡くなるまで管がたくさんついたままになってしまうことも決して少なくありません。
だからこそ、医師は十分に本人や家族に説明を行い、どんな最期を迎えたいのかを一緒に考えます。
個人的には作中で一番、碓氷の、この患者の意志を踏みにじろうとした行為が絶対に許せません。
ですが、患者さんが自分で決めたこととはいえ、最期の時に何もできず見守ることしかできない時、本当に悔しくて辛い思いをしたことが自分にもあります…
「あの時こうしていれば…」「あの時あれに気づいていれば…」とかやっぱりくよくよ考えてしまうんですよねぇ…
でも、この本では、自分の死と向き合いながらも毎日を自分らしく生きている登場人物たちが多く登場し、読んでいて心が救われたような気分になりました。
また、この病院では患者さんの希望をできる限り叶えていました。
実際のところ、願いを叶えてあげたいものの難しいことが多いです。でも、作中では患者さんの希望をできる限り叶えることができるように全力を尽くす医療者たちの姿が描かれており、とても暖かい気持ちになりました。
2.誰もが死と隣り合わせ
分かっています。人がいつか死ぬなんて子供でも知っていますよね。けれど、知識として知っているのと、本当に人が亡くなるのを見るんじゃ、全然違うんですよ
救急医療を実習で体験した碓氷の言葉です。
めちゃくちゃ共感しました笑
人が死ぬのは知っているし、その現場に立ち会うことも分かっていて医療職者になったのですが、実際に見ると「あ、本当に死んでしまうんだ…」ってなりました。
普通に生きていれば多くの人の死を見ることもありませんし、死を身近に感じることもなかなかありませんもんね。
ですが、ユカリさんは命にカウントダウンがあることも、明日生きている確証もないことも知っています。彼女には頭に爆弾があるから。
碓氷はそんなユカリさんに「誰だって爆弾を抱えて生きている」と伝えます。
爆弾を抱えて生きているのは彼女だけではないことを伝えます。
何となく、普段「死」を意識することなんてないですが、誰もがいつ死んでもおかしくないことをもっと我々は自覚すべきなのでしょうね。
知念先生が現役の医師であるからこそ響くメッセージですね!
4.まとめ
いかがでしたか?
今回は知念実希人先生の「崩れる脳を抱きしめて」についてまとめさせていただきました。
最後まで読んでいただいてありがとうございました!
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