こんにちは、きなこぬこです。
今回は青山美智子先生の「赤と青とエスキース」を読んだ感想・考察についてまとめていきます。
2022年本屋大賞にノミネートされました!!
あらすじ
自分を変えるために交換留学でオーストラリアにやってきたレイ。しかし、なかなか変わることができず、友達もできないまま思い描いた生活とはかけ離れた生活を送っていた。そんなある日、バイト先の先輩であるユリさんに誘われて参加したバーベキューでブーと出会い、レイが日本に帰るまでという期限付きで付き合い始める。レイの帰国が近づいてきたある日、ブーの友人である画家のジャック・ジャクソンに絵のモデルを依頼される。時代を超え、様々な人たちの姿を一枚の絵が見つめていく。
以下はネタバレを含みます。
感想
一枚の絵を共通にしたオムニバス形式の短編集かと思いきや、ずっと一組のカップルの人生を追い続けていたんですね!レイとブーのオーストラリアでの出会いは劇的で、情熱的なものでした。そんな2人が結ばれた暁には、「末永く幸せに暮らしました」と付けるのが常ですが、この物語は愛する2人の人生は「幸せに暮らした」という一言で片づけられてしまうようなものではないことを教えてくれます。喧嘩したり、相容れなくなってしまっても人生は続いていきます。そんな彼らの人生に、2人の原点となった『エスキース』がそっと寄り添う……素敵ですね!
頭の中にあるものを、このリアルな世界に落とす最初の作業。描いているうちに新たに生まれてくる光景。妄想と現実を行ったり来たりしながら、作品が創り上げられていく「はじまりの儀式」かもしれない。
上記はエスキースについての作中での説明です。あくまで下絵であるエスキースは、本番の絵ではありません。そして、「はじまりの儀式」なのです。作中で描かれてきたレイとブーの人生はいろいろと試行錯誤をしているエスキースであり、本当のはじまりに向けた準備段階だったのでしょう。赤と青で始まった2人の人生は、時間が経つにつれて色を変えながら進んでいきます。最初に思い描いたものとは違っていても、「そのときの自分の持つ色で、人生を描いていく」のですね!
50歳になってこれから新しいことを2人で初め、共に人生を歩んでいく2人の姿を見て、いつだって人生はリスタートできるという勇気をもらいました!
個人的には「トマトジュースとバタフライピー」がお気に入りです。天才的な弟子が賞を受賞して有名になり、妬む気持ちがある漫画化。共に取材を受けることになった時には自分の話をしてアピールしますが、そんな自分の自己顕示欲の強さに気付いてしまいます。弟子は無口でなかなか思いを口にすることはありませんが、努力を続ける師匠を心から尊敬していました。そして漫画化は、自分の承認欲求を満たそうとするばかりで、自分の漫画への愛情を忘れていたことに気付きます。そして、自分のことを認めてくれる人間が近くにいたことに気付くことができました。この物語では、弟子と師匠のお互いがお互いの鏡としての役割を果たしていたのかもしれませんね!
まとめ
いかがでしたか?今回は青山美智子先生の「赤と青とエスキース」についてまとめさせていただきました。
最後まで読んでいただいてありがとうございました!
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