こんにちは、きなこぬこです。
今回は阿泉来堂先生の「忌木のマジナイ」を読んだ感想・考察についてまとめていきます。
今作は那々木悠志郎シリーズ3作目ですね!
那々木悠志郎シリーズのまとめ記事はこちら!
[ url=sc_blogcard”https://kinakonuko.com/2022/02/24/nanaki-yushiro-matome/”]あらすじ
ホラー作家の那々木悠志郎に指名される形で担当編集となった久瀬古都美は、那々木から未発表原稿を渡される。それは那々木が遭遇した最初の事件が題材となっており、主人公の小学六年生の篠宮悟が学校で流行っている”呪いの木”の下に埋めた写真に写っている人間の元に”崩れ顔の女”が現れるという怪異に巻き込まれる物語だった。休暇のため実家に戻って原稿を読み進める久瀬の元に、物語の中の存在であるはずの”崩れ顔の女”が現れる。助かる方法を求めて原稿を読み進める久瀬だが、読めば読むほどに怪異が近づいていく。果たして久瀬と悟は顔を見せられると失明してしまう怪異から逃れることができるのか。
以下はネタバレを含みます。
感想
今作はシリーズ3作目ですが、ついに那々木悠志郎の過去の物語が描かれましたね!シリーズを通して登場しており、ナルシストで怪異に対する異常な執着を示す様子が非常に魅力的なキャラクターだと思っていたのですが、両親を失くし引き取られた親戚の家で存在を否定され続けた彼の過去は想像以上の過酷さで驚きました。心から信頼することのできる叔父の那々木に出会うことが出来て本当に良かったと思います。また、叔父の那々木も変わった人物で、明らかに現在の那々木は叔父の影響を受けて人格が形成されたんだなと……笑
今回も迫りくる怪異への対抗策を時間がない中で必死に模索する展開は疾走感があり、前の2作よりもグロテスクな描写や犠牲者の数は控えめになっているものの、より那々木と怪異の出会いや那々木の変化に焦点が当てられていて面白かったです!
考察
今作では那々木悠志郎と怪異の出会いが描かれていたため、今回は那々木悠志郎にとって怪異は何なのかについて考察していきたいと思います!
以降「那々木」と書くと2人いてややこしいため、作中と同様に那々木悠志郎のことを悟、叔父のことを那々木として書いていきます。
本物の怪異と出会う前の悟は、怪異はホラー小説の中にあるフィクションの存在であり、作り話だからこそ楽しめると考えていました。また、うまくクラスに馴染めず、自宅でも親戚の家族に毎日のように虐待されて存在を否定されていた悟は、ホラー小説を読むことで現実逃避をしていました。
そんな中、慟哭の木の下の写真を埋めると写真に写っている人の元に崩れ顔の女が現れ、その顔を見ると失明してしまうという怪異が周囲で大流行します。悟は最初から怪異の存在を信じていなかったものの、クラスメイトに焚きつけられて自らの写真を埋めることで、噂が本当だったことを思い知らされます。
崩れ顔の女こと卑沙子は、木の下に埋められた写真に写っていて、噂を知っている人の元に姿を現します。そして、噂についてや卑沙子について知れば知るほど近づいてきて顔を見るのが早まります。突然近くに現れて顔を見せつけることもできるのに、時間をかけて少しずつ近づいてくるのです。
しかし、慟哭の木に囚われている卑沙子は「痛いの痛いの飛んでけ」というおまじないで満足して帰っていきました。卑沙子は醜くなってしまった顔を受け入れてくれる人、自身の存在を否定しない人を求め、その心の痛みに共感してくれる人を探して色んな人のところに現れていたのかもしれませんね。
また、那々木は怪異と向き合う時の心構えを以下のように話しています。
「立ち向かう際には怪異のことをよく『知る』必要がある。己を知り、人を知り、起原を知り、そして怪異を理解する」
この言葉からも、怪異が何を求めているのか、何故人を害するのか、怪異の元となった人間はどんな人物か、過去にどんな事件があったのかなど、怪異のことを良く知ることが求められることが分かります。実際に前の2作でも、怪異の求めるものを与えて願いを叶えることで怪異から生き延びています。
以上のことから、周囲の人間にずっと存在を否定され続けてきた悟は、同じように否定し拒絶されながらも救いを求める怪異に自身を重ねているのではないかと考えました。怪異を拒絶するのではなく受容することこそが、成長した悟、那々木悠志郎自身の存在が受容される行為であると考えているのかもしれないですね。
まとめ
いかがでしたか?今回は阿泉来堂先生の「忌木のマジナイ」についてまとめさせていただきました。
最後まで読んでいただいてありがとうございました!
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