こんにちは、きなこぬこです。
今回は松岡圭祐先生の「écriture 新人作家・杉浦李奈の推論」を読んだ感想についてまとめていきます。
今作はécritureシリーズ1作目ですね!
あらすじ
新人ラノベ作家の杉浦李奈は、デビュー作が話題の大学教授である岩崎翔吾と芥川龍之介と太宰治をテーマに対談する。その縁から新作の帯の推薦文をもらえることになったが、岩崎の作品に盗作の疑惑が上がり、せっかく出来上がった帯は破棄することに。渦中の人物である岩崎が失踪する中、担当編集からこの件に関してノンフィクションの執筆を提案される。調査を進める李奈は、次々と事件に巻き込まれていく。
以下はネタバレを含みます。
感想
序盤は岩崎の無実を信じていた李奈でしたが、調査を進めるにしたがって岩崎が無実ではないことに気付いてしまい、彼の足跡を追って辿り着いた京都では死体を発見してしまいます。それでも李奈は調査を止めることなく、岩崎の罪を暴きます。最初は内省的だった李奈が、調査を通じて多くの人と関わる中で成長していきます。小説家は内省的であるべきであると考え成長できず、教え子の作品を盗作した岩崎とは対照的ですね!
岩崎は芥川龍之介を尊敬していながら、盗作していると断定していました。その岩崎自身は、過去に教え子に嫉妬して文芸界から追放するために盗作騒動を起こし、その上彼の作品を自分のものとして発表しています。
岩崎は持論でマズローの欲求段階を用いて、小説家は他の1~3層の不足を補うために4層目の承認欲求を育てたと述べています。特に岩崎は芥川龍之介がこの承認欲求を満たすために盗作を行ってでも周囲からの評価を得ようとしていたと分析しています。芥川が盗作をしていたことについて異常なほどに断定しているのは、彼が自身の盗作の罪を憧れの芥川と重ね合わせることで、自身の罪を正当化していました。これはフロイトが提唱した防衛機制のひとつである「取り入れ」に当たるのではないかと考えました。岩崎は文学を好み、自身も文学を書こうと苦心していたにも関わらず、その才能がないことに苦しんでいました。それがストレスとなり、安全装置として防衛機制が働いたのでしょう。芥川に盗作疑惑があったことから、自身も同じことをしても芥川と同じと考えたのではないでしょうか。
マズローの欲求段階を用いた理論に対しては一理あるかもと思ったのですが、大御所小説家の駒園はこの理論を否定し、李奈に対して自己の内面と向き合うだけではなく周囲の人間とも関わりを持つことが成長するためには必要であると説きます。
まとめ
いかがでしたか?今回は松岡圭祐先生の「écriture 新人作家・杉浦李奈の推論」についてまとめさせていただきました。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
コメント
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