【「俺ではない炎上」浅倉秋成先生(ネタバレ注意)】周囲に責任転嫁する醜さを描く!あらすじ・感想をまとめてみた!

サスペンス

こんにちは、きなこぬこです。

今回は浅倉秋成先生の「俺ではない炎上」を読んだ感想についてまとめていきます。

今作は2023年このミステリーがすごい!19位、2022年週刊文集ミステリーベスト10 9位にランクインしています!

あらすじ

大帝ハウス大善支社の営業部長を務める山縣泰介。ある日突然Twitter上で泰介になりすました人物のアカウントが投稿した死体が映った写真のTweetが炎上したことにより、身に覚えのない殺人事件の容疑者となってしまう。弁解しても当のアカウントは巧妙に泰介になりすましており、誰からも信じてもらえない。ネット上で日本中に顔と指名を含めた個人情報が流出し、誹謗中傷が降りかかる。仕方なく逃走する泰介だが、日本中の人間から逃げ続けることができるのか。

以下はネタバレを含みます。

感想

今作は時系列が混在しいる部分がどんでん返しの仕掛けとなっていて、まんまと騙されてしまいました!主人公の山縣泰介が偽のSNSアカウントで炎上してからの逃走劇と、娘の夏美がえばたんと共に駆け回るシーンは平行して起こった出来事と思いきや、その間には10年の時間がありました。10年前の夏美が事件に巻き込まれかけた事件と炎上事件を交互に出すことで、現在起こっている炎上事件についてではなく異なる2つの事件について描かれているとは思わせないようにミスリードされていてすごいなぁと思いました!

山縣泰介が自分は誰からも好かれていることに自信を持っていて驚いたのですが、読み進めるうちにそれらは案の定本人の思い込みであることが分かりましたね。彼の言葉の節々に他人をバカにしている雰囲気を感じましたし、自分の価値観を他人に押し付けるタイプの人だなと感じていました。どんなに良い人でも誰からも好かれるなんてありえませんが、誰からも好かれると自信を持っていた時点で彼の自己評価の甘さ他人の感情を汲み取ることができていない性質が感じられますよね。

最終的には今回の事件を通して自分を客観視できていなかったことに気付き、自分の非を認めたり自分の知らないことを知ろうとする姿勢を学ぶことができているので、とても成長したんだなと思いました。

個人的に一番嫌悪感を抱いた登場人物は初羽馬でした。大学でディベートのサークルに所属している彼は、山縣泰介と同様に自身に非常に自信を持っています。しかし、彼の敵は個人ではなく、自分たちより上の年代の人間という非常に漠然としたものです。そして、具体的な事象はないものの、自分たち若者が上の世代から不当に扱われていると感じ、能力を十分に発揮できていないと考えているようです。初羽馬は自分はもっと有能であり、その秘めた能力が発揮できていないのは若者を尊重しない社会や上の年代の人間のせいである、つまり自分は無能ではなく周りの環境によって能力が制限されていると感じている様子にイラつきます笑

彼の思想は明確な根拠に乏しいにも関わらず、自分自身の能力を過大評価しているように感じ、非常に嫌悪感を抱きました。

今作の登場人物たちは様々な言い訳をして「自分は悪くない」ということを証明しようと躍起になっています。その姿がコミカルに描かれているものの、とても痛々しいことを読者に見せてくれます。何か思い通りにならないことが起こった時、今作の登場人物たちのように周囲に原因を求めるのではなく、自分の責任を考えられる人間になりたいと思いました。

今作で登場したTwitterのようなSNSは匿名性が高く、実名等の投稿者の背景が出ない分、SNS上での言葉が現実でどのような影響力があるのかを忘れてしまいがちです。また、今作のように誰かを吊るし上げる時は、大勢の人が加担するほどひとりひとりの責任が軽くなっていくように錯覚してしまい、不必要な程に徹底的に対象を追い込んでしまいます。誰かを徹底的に叩くという一連の流れを作り出したのはその流れに参加したひとりひとりではあるものの、誰かひとりの責任者が存在しているわけではないために責任が分散してしまいます。こうして無責任な投稿が乱立してしまうわけですよね。

山縣泰介の炎上は冤罪でしたが、これに加担した人々は殺人犯を捕まえなければという正義感に基づいて行動しています。しかし、無関係な人々の正義感が山縣泰介を冤罪へと追い込んでいきました。どんなに精査したところでネット上に溢れたフェイクを見破ることは難しいですが、むやみやたらに人を叩いたりせず、SNS上でも責任のある行動を心がけようと思いました。

まとめ

いかがでしたか?今回は浅倉秋成先生の「俺ではない炎上」についてまとめさせていただきました。

最後まで読んでいただいてありがとうございました!

コメント

タイトルとURLをコピーしました