こんにちは、きなこぬこです。
今回は阿泉来堂先生の「ぬばたまの黒女」を読んだ感想・考察についてまとめていきます。
今作は那々木悠志郎シリーズ2作目ですね!
那々木悠志郎シリーズのまとめ記事はこちら!
あらすじ
12年ぶりに北海道の皆方村に帰郷した井邑陽介は、同級生たちとの再会を喜びながらも、妻から妊娠を告げられたことが気がかりだった。同級生たちから一緒遊んでいた霧江が亡くなり、村の中心的存在だった霧江の実家の神社が火事でなくなったことを聞き衝撃を受ける。さらには先日、神社の跡地に建てられた神社の前で異様な死に方をした死体が発見されたという。懐かしさと共に思い出の場所を巡っていた彼らはホラー作家の那々木悠志郎と出会い、村の滞在を希望する那々木と共に過ごすこととなる。その夜彼らは恐ろしい体験をすることになるが、それは始まりに過ぎなかった。
以下はネタバレを含みます。
感想
前作では主人公がストーカーでかなり衝撃のラストでしたが……それに比べれば衝撃は少ないものの、今作もラストにどんでん返しがありましたね!前作の終わり方は胸糞悪かったのですが、今作は未来に希望を持てる爽やかなラストでした笑 村での出来事は全て霧江を手に入れたい人たちが起こしたものであったことを考えると、本作の全てが茶番に思えてしまうという危険性もありますが……井邑の父親との和解、そして父親としての決意を固める描写があるから全てが無駄だったようには感じられます笑
また、前作でも怪異が村人たちを襲うことで多くの死者を出し、かれらが惨い殺され方をして死んでいく様子は結構グロテスクでしたが、今作では前作よりもさらにグロテスクでしたね!前作は比較的すぐに命を奪っていましたが、今作では深手を負った人々が痛みや恐怖に苦しむ様子がかなり詳細に描かれていた上に時間をかけて殺していたので前作の何倍も描写が凄まじかったです。
『罪は死者によって裁かれる』という言葉が繰り返し登場しますが、結局のところ死者によって裁かれた人なんてほとんどいませんでしたね。三門一族を滅ぼすのは騙されてきた村人でしたし、村人たちを殺したのも雫子を使った宮本でした。冥界に通じる大穴に身を乗り出して死んだ宮本だけは死者によって裁かれたといえるのかもしれませんが、それ以外は犯した罪は生きている人間によって裁かれていましたね。因果応報なのでしょうか。
ちなみに、終盤のシーンで宮本が那々木を見て何かに恐れているシーンが気になったのですが……宮本は一体何を見たのでしょう?シリーズの続編で明らかにされるのでしょうか? 前作の感想でも書いたのですが、個人的には那々木悠志郎がジョジョの岸部露伴に似ていて、好みにドストライクなキャラクターです笑 続編も楽しみにしています!
考察
タイトルにある「ぬばたま」の意味は?
今作のタイトルにある「ぬばたま」って一体何なのでしょう?作中では全く触れられていなかったので、少し考えてみたいと思います。
上の写真は、「ぬばたま」と呼ばれるヒオウギの実です。実の黒さが特徴的ですね!このことから、和歌の枕詞として黒髪や夜などの黒いものにかかります。今作で登場する怪異は非常に黒や闇と密接な関係がありましたよね!登場時は明かりが消えていましたし、纏っている衣装も黒い巫女装束でしたね。以上のことから、「黒女」という雫子が怪異になった存在の「黒い」というイメージをさらに強くする形容詞として使われているのではないかと思いました。
また、ヒオウギの花言葉は「誠意」です。
私利私欲やよこしまな考えを捨て、相手の立場をくみとって正直な態度で接する心。まごころ。
引用元:コトバンク https://kotobank.jp/word/%E8%AA%A0%E6%84%8F-544480
上記は「誠意」の定義ですが、正直今作の登場人物たちはほぼ全員が私利私欲のために動いてますよね笑 宮本は霧江に会うため、怪異となった雫子は殺された霧江に会うため、村人は自分たちの平和を守るため、そして三門一族は自分たちの村での地位を保つため……
しかし、2人だけ相手のために行動した人物がいます。1人は井邑の父親です。井邑の父親は井邑が原因で家庭が崩壊し、息子が父である自分を原因だと思って恨んでいるにも関わらず、自分の井邑のために行動していました。井邑の父は、昔からずっと息子に誠意を持って接していました。
もう1人は……実は那々木です笑 普段の様子を考えると他人の心を慮るという行動をするようには見えませんが、今作で事態を収拾したのは那々木の誠意(?)でした。他人の死体を霧江の死体と偽って雫子を騙しているので微妙ですが……那々木は雫子の望みをくみ取って行動した結果、井邑と那々木は助かっています。相手の立場をくみ取って願いを叶えるようとしたという点において、那々木は雫子に対して誠意を示したと言えなくもないのでは……?
まとめ
いかがでしたか?今回は阿泉来堂先生の「ぬばたまの黒女」についてまとめさせていただきました。
最後まで読んでいただいてありがとうございました!
コメント
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