学校という箱庭で遭遇する社会の暗い影!本と鍵をテーマに二人の男子高校生が推理をくり広げる!二人の違いがどこにあるのか考察してみた!「本と鍵の季節」米澤穂信先生 ※ネタバレ注意

こんにちは、きなこぬこです。

今回は米澤穂信先生の「本と鍵の季節」を読んだ感想・考察についてまとめていきます。

あらすじ

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高校二年生の堀川次郎は、同じ図書委員の松倉詩門と共に誰もいない放課後の図書室で他愛もないことを話ながら過ごしていた。そこへ元図書委員である先輩、浦上が亡くなった祖父の金庫の暗号を解いてほしいと頼みに現れる。妙にとげとげしい松倉の様子に疑問を抱きながらも、堀川は松倉と共に浦上に祖父の書斎で暗号のヒントを探す。

ロックオンロッカー

「貴重品は、必ず、お手元にお持ちくださいね」 ――美容院に一緒にカットに来た松倉と堀川だったが、いつもと違って接客してきた店長の言葉に疑問を抱く。その言葉に含まれた意味を松倉と共に考えるが、口に出そうとしたところで松倉に止められる。

金曜に彼は何をしたのか

テスト期間直前の金曜日、何者かが職員室の近くの窓を壊して侵入した。後輩の植田の兄は校内でも有名な不良であり、根拠もないまま罪を着せられてしまいそうになっていた。植田は図書委員の先輩である堀川と松倉に、兄の疑いを晴らしてもらえないか相談する。

ない本

いつも通り図書室で図書委員の仕事をしていた堀川と松倉のもとに先輩の長谷川が訪れ、本を探してほしいと二人に依頼する。長谷川は自殺した三年生の生徒を自殺前に見かけた時に便箋のようなものを挟んでいた本を探しているのだという。図書委員として、長谷川の証言をもとに本を絞り込んでいく堀川を長谷川だったが……

昔話を聞かせておくれよ

図書館で暇を持て余していた時、唐突に松倉が「昔話をしようぜ」と提案する。松倉の話す昔話が今まで聞いたことのなかった松倉の家族の話であることに気づいた堀川は、松倉が6年間探している亡き父が残した宝物を共に探すため、松倉の思い出話は父が残したものを確認していく。

友よ知るなかれ

松倉との宝探しの翌日、どうしても消えない違和感を確認するべく図書館を訪れた堀川。少ない手がかりから情報を見つけ出した堀川は、松倉の嘘を暴いてしまう。

以下はネタバレを含みます。

感想

米澤穂信先生は、本当に青春ミステリーを書くのがうまいですよね!古典部シリーズも大ファンですが、今作も青春時代の複雑な心理をうまく描き出しつつ、ミステリーとしても非常に完成度の高い構成になっています!

堀川と松倉はちょっと頭が良いけれど、図書委員をしている普通の男子高校生です。彼らの事件は図書館という狭い空間から始まりますが、毎回人の悪意や善意が見え隠れする事件に巻き込まれてしまいます。人の善意を信じる堀川と人の悪意に敏感な松倉の、正反対のもののみかたをする二人だからこそ、様々な事件を解決することができたのでしょうね!

私もまんまと松倉に騙されて堀川と一緒に宝探しに参加させられてしまいました笑 嘘をつかずにあそこまで事実を曲解させるように仕向けてくるとは……恐るべし。

松倉の境遇には同情してしまいますし、しんどい時程見栄を張る彼の姿に胸は痛みますが、やはり盗品を自分のために使ってしまえば「普通の高校生」ではいられなくなってしまいます。どうしようもない現実に立ち向かうために何かに縋りたくなる気持ちは分かるのですが、どうか、堀川と仲良しの図書委員である松倉として、図書室に戻ってきてほしいと願います。

続編も決定しているのは嬉しいですね!堀川と松倉の関係がどうなってしまうのか、続きが気になる終わり方だったので早く読みたいです!

考察

今回はこの短編集の主人公だった二人、堀川次郎と松倉詩門という二人の人物像について作中でのいくつかの出来事から考えていきたいと思います!

鳥と窓ガラスの一件

職員室近くの窓が夜の間に何者かに割られていた事件で、図書委員の後輩である植田の兄、植田昇に疑いがかかっていたわけですが、その真犯人は松倉なのでした!窓を割った理由はもちろん試験問題を盗むためではなかったのですが、なんと校内に閉じ込められてしまった鳥を外に逃がすためという、試験問題を盗む以上に予想斜め上の回答でしたね……笑

これに対する堀川と松倉の言い分が正反対で面白いですね。

犯人だった松倉はというと、「胸を張るでもなく、悪びれるでもなく、天気の話をするように」堀川に対して真相を語ったわけですが、松倉にとって鳥>窓ガラスの破壊であり、植田昇が疑われた件に関しては多少なりとも申し訳なさを感じているようではあるものの、鳥を助けるために窓ガラスを割ることは当たり前だと思っていることが分かります。

このことから、松倉という人物は目的のためであれば手段を選ばずに行動する人間であるということがわかりますね。

一方の堀川は、松倉の言動に対し、鳥を助けることは大切だと認めてはいるものの「いや違う、そういう問題じゃない。大事なのは……」と考えています。鳥を助けることは確かに大事かもしれませんが、そのために退学になるリスクを冒してまで窓ガラスを割るのはどうなのでしょうか?大半の読者が堀川サイドかと思います笑

ただし堀川は鳥<窓ガラスの破壊と言っているのではありません。「大事なのは……」の後に続けようとしたのは、手段や方法なのではないでしょうか。決して鳥と窓ガラスの破壊に優先順位をつけているのではなく、鳥を助けるために窓ガラスを割る以外の方法を取るべきであったのではないかと考えているのでしょう。

このことから、堀川は公序良俗に基づいた、一般的な常識の範囲内の行動をする人間であることが分かります。

目的に対する手段の選択方法が異なる二人だからこそ、すれ違いが生じてしまうのでしょう……

長谷川先輩と遺書の一件

どうも俺は人を信じるのが苦手だ。心からの言葉でも、狙いはなんだと疑っちまう。その点、お前は偉い。先輩の話をまともに聞いたんだな。尊敬する……これは、言葉通り受け取ってくれ。

長谷川先輩が二人に本探しを依頼しに来たものの、その目的を看破してしまった堀川に対して松倉が言ったことばです。この時、松倉は遺書そのものが長谷川先輩の捏造であると疑っていましたが、堀川は遺書は本物であると信じていました。結果的には事の真相を見つけ出してしまった堀川が長谷川先輩の前で話してしまうわけですが……

この松倉の言葉は本心からの堀川に対する尊敬なのではないかと思います。松倉は人を疑うところから始めます。しかし、堀川は人を信じるところから始めるのです。

昔話としてプールの話を語った堀川ですが、その当時のみんなの前でメガネを糾弾してしまった過去と同じく、長谷川先輩の思いを考えずに全てを話してしまった堀川は、未だに堀川の父が教えた「人には心がある」ということを十分に理解できていないようですね。

堀川は、真実を明らかにすることこそ正しいと思っているのでしょう。気づいたしまえば黙ってはいられない性格のようです。その行いは、他人への配慮が足りていません。

しかし、だからこそ堀川の性格は裏表がないものだと言えるでしょう。これは、人を疑うことを前提にしている松倉からすると非常に尊敬できる性格なのでしょうし、堀川は松倉にとって裏を考えずに付き合うことのできる友人なのでしょうね!

堀川と松倉、2人の関係はどうなる?

真実を明らかにすることが正しいと思っていた堀川ですが、その行いが松倉の秘密を暴いてしまう結果になります。松倉の立場に対して安易に「分かる」なんて言葉を使うことなく、友達でいてほしいと伝えた堀川の対応は素敵でした。

ラストのシーンでは図書室に登場しない松倉ですが、図書委員を続けるかどうかはちょっと微妙ですよね……

堀川に秘密を知られてしまった松倉はこれまで通り堀川と一緒にいることができるのでしょうか?

堀川に口止めをしていることから、転校するようなことはないと思うのですが……二人の関係が今後どうなっていくのか、続きが気になりますね!

まとめ

いかがでしたか?

今回は米澤穂信先生の「本と鍵の季節」についてまとめさせていただきました。

最後まで読んでいただいてありがとうございました!

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