こんにちは、きなこぬこです。今回は池井戸潤先生の「ハヤブサ消防団」を読んだ感想・考察についてまとめていきます。
引用元:YouTube
あらすじ
ミステリー作家の美馬太郎は、取材のため父の故郷である自然豊かなハヤブサ地区を訪れ、その美しさに魅了される。父の家に越した太郎は、地元の消防団に勧誘され入団を了承する。入団式当日、ハヤブサ地区を離れて式典に参加していた消防団の元にハヤブサ地区で火事が起こったという一報が入り急いで駆けつけるものの、消火が間に合わず全焼となった。実はハヤブサ地区ではここのところ火事が続いていた。さらに、火事が起こった日に家に出入りする姿を見られた男が失踪し死体で発見される。太陽光発電のために土地の売却を勧めるセールスマンに、都会から来た謎の美女—―のどかなハヤブサ地区に潜む闇を探るため、太郎は作家としての経験を活かして調査を進める。
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以下はネタバレを含みます。
感想
前半はハヤブサ地区に移住した太郎が集落の豊かな自然や美しい景観、都会の喧騒から離れた生活を楽しむ姿が中心に描かれていたため、全体的に不穏な空気が漂ってはいるもののミステリー色は強くありませんでした。しかし、後半になると遂に火災現場で他殺体が発見され、物語が一気に加速していきます。太郎が探偵役になり、集落の人々や親戚、市長から話を聞いてまわり、集落の過去やソーラーパネル販売業者をフロント企業としたカルト宗教とハヤブサ地区の関連について太郎の目線や思考と通じて推察されていきます。
物語の要となるのはハヤブサ地区に住む誰がカルト宗教の内通者であるのかでしたね。序盤から怪しまれていた映像クリエイターの立木彩は、中盤和尚の江西、集落の内情に詳しい賢作、そして太郎と共に、元入信者という立場からカルト宗教の内部を詳しく知る人間として仲間になっていました。この時点で序盤にあった彩への警戒はかなり薄れたかと思っていたのですが、最終的に彩は宗教団体から脱退できておらず、住人の中に信者を増やしてハヤブサに拠点を置くために動いていたことが明らかになってしまいます。さらには、内通者はひとりではなく複数存在しており、太郎が想像していた以上にカルト宗教はハヤブサ地区に深く根を張っていました。
後半の太郎の調査によって真相がどんどん明らかになっていく展開はドキドキして面白かったのですが、前半は多く登場していた消防団としての活躍や他の消防団員との交流は極端に少なくなってしまったので少し残念に感じました。特に勘介とは仲良くしていた様子であり、勘介の裏表のなさそうなキャラクターはとても好感が持てたので、後半ももっと活躍してくれたら嬉しかったなと思いました。
ミステリーとしては隠されていた真相が明らかになっていく過程や、太郎の思考の過程が読者にも分かるように描かれているのがとても楽しめました。しかし、ミステリーだと思って読み始めていたので、前半の集落での暮らしを楽しむ太郎の描写が助長に感じてしまいました。
とはいえ、土着のおどろおどろしい迷信や閉塞的な田舎社会でのドロドロした人間関係など、多くの田舎を舞台にしたミステリーに登場する要素はかなり少なく、田舎で暮らすことによる住人たちとの密な交流の楽しさやその土地に住むことの誇りが前面に出されながらもミステリーと融合されていて、爽やかで面白いなと思いました!
私は比較的都会で生まれ育ってきたため、消防車の到着に時間がかかる地域には消防団として活躍している人々がいることをこの作品で知りました。確かに火事は時間との勝負でしょうし、その地域に精通した人間が少しでも早く動くことのできる体制が作られてるというのは安心感がありますね。
個人的には「家が燃えたんじゃない。人生の一部が燃えたんですよ」というセリフが印象的でした。火事が奪うのは家というものだけではなく、その家に刻まれた人々の歴史も消えてしまう。火事がどれほど恐ろしい事象であることを再認識させられました。
まとめ
いかがでしたか?今回は池井戸潤先生の「ハヤブサ消防団」についてまとめさせていただきました。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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