【「兇人邸の殺人」今村昌弘先生(ネタバレ注意)】あらすじ・感想・考察をまとめてみた!剣崎比留子シリーズ3作目!

ミステリー(国内)

こんにちは、きなこぬこです。

今回は今村昌弘先生の「兇人邸の殺人」を読んだ感想・考察についてまとめていきます。

剣崎比留子シリーズの3作目です!

1作目の「屍人荘の殺人」2019年12月葉村譲役:神木隆之介さん、剣崎比留子役:浜辺美波さん、明智恭介役:中村倫也さんで映画化されていましたね!

漫画化もされていますね!

剣崎比留子シリーズのまとめ記事はこちら!

あらすじ

班目機関を追う葉村と剣崎の元に、以前班目機関に出資していた企業の人間である成島が接触してきた。彼によると、廃墟のような雰囲気をウリにしているテーマパークの中にある館に、班目機関の情報を持つ人物がいるという。成島の雇った傭兵たちと共に館に潜入する葉村たちだったが、予想外の出来事が起こり閉じ込められてしまう。果たして彼らは異形の魔の手から逃れ、朝を迎えることができるのか。

以下はネタバレを含みます。

感想

「犯人は探偵の敵なのか」—―ミステリーにおいて探偵vs犯人は大前提ですが、今回の答えは否でしたね。

無差別に人を殺していたのではなく、目的を持った行動をしていた今回の犯人、裏井。その生い立ちにも、巨人との関係にも、同情せずにはいられないストーリーが隠れていましたね。冒頭の2ページは裏井の決意が描かれていたんですね!

追憶パートはメンバーに紛れ込んだ犯人のものかと思いっていたので、巨人のものと分かって本当に驚きました!

また、生き残りが誰であるのかについてですが、剛力の怪しい言動と力強そうな名前(笑)に惑わされ、生き残りが身体能力が高いということから傭兵の誰かの可能性も高いと思ってしまい、さらに追憶パートの内容から犯人は女性であると思い込まされ……まんまとミスリードに引っかかりました笑 悔しいですね笑

バリケードを作る時にやっと傭兵たちと同じくらいよく働く裏井さんに違和感を持てましたが、そこまで全然ノーマークでした!でも確かに、傭兵以外の他の登場人物はフルネームで登場人物欄に名前が書かれているのに裏井は苗字のみで、最後までフルネームが分からなかったんですよね。

巨人が最終的にどうなったかは描かれていませんでしたが、無事に苦しみから解放されたことを祈ります。

比留子さんは今回、安楽椅子探偵が出来て良かったなぁと思いました笑

ちなみに、最後の最後に1作目の「屍人荘の殺人」に登場した重元さんが再登場しますね!次回のお話に彼がどう絡んでくるのか、楽しみですね!

考察

剛力京と剛力智

剛力京が屋敷に忍び込んだ目的は、剛力智を探すことでした。

剛力京はもともと前田圭子という人物であり、同級生の剛力智の妹の剛力京が失踪したため、その戸籍を譲り受け、なり替わっていたのでした。二人で新たな人生を歩み始めますが、今回の舞台だったドリームランドで働いていた剛力智が1年前に失踪してしまいます。

剛力京は智に頼ってもらえなかったことに対しても悩んでいることに気付けなかったことに対しても、自身の至らなさを責めて後悔していました。そして、比留子さんに対して「もし剣崎さんくらい強ければ、智も頼ってくれたのかな」と問いかけていました。

頼って欲しいと願う姿は、まるで比留子さんに頼って欲しい葉村のようですね!

そして剛力京は、比留子に対して葉村のことを信じて頼るように背中を押します。自分と智の経験から、1人で勝手に遠慮したり諦めたりせず、失敗や不幸を分かち合う方が幸せだったかもしれないということを伝えます。

こうして、葉村を信じて行動に移すべきなのか迷っていた比留子さんは、ラストに向けて動き出すのです!京の思いが比留子さんに繋がれたようで、素敵なシーンでした!

裏井コウタとケイ

この二人も、悲しいお話でしたね……

班目機関の実験に参加していた裏井コウタを心配した女の子、ケイ。不木の手にかかって巨人となり、40年間も苦しみながら、仲間を護りたい一心で闘い続けてきました。そんな彼女の姿に、自分を責める裏井。こうして彼は復讐に身を投じ、ケイの手で生涯を終えました。

そんな裏井は、鍵を取りに館へ戻る直前に葉村に対して「どんなに自分の無力さが恨めしくなっても、求めるものに手を伸ばすことをやめてはいけない。弱いのならこれから強くなればいい」と伝えます。

ケイを助けたいと願いながらも何もできずに自分を責め続けた裏井は、自身のその無力さを嘆いていました。葉村も自分が非力で比留子さんの力になれないことに苦しんでいました。そんな葉村に対し裏井は、自身の無力さに悲観して終わるのではなく、諦めずに強くなるために頑張り続けてほしいと最後に伝えたのです。

比留子さんと葉村の関係の変化

上述した二組の先人たちからのアドバイスを得て、2人の関係は今作で急激に変化することになります。

前回のラストではワトソンになりたい葉村に対し、比留子さんはホームズになれないと伝えて終わりましたね。

今作では特殊な状況下で比留子さんが孤立してしまったことで、自分は安全圏にいれる代わりに事件捜査のかじ取りが出来ない状況に陥ってしまいます。しかし、さすがは比留子さん、状況に直接干渉できないなかでも葉村が運んでくる少ない情報から犯人を当て、犯人を牽制することで葉村に安全を確保します。しかし、今回のこれらの行動も、葉村を守るためのものであり、葉村を相棒として信頼しているわけではないんですよね……

しかし、最後の最後に比留子さんは、剛力京の言葉に背中を押されて葉村を信じた行動をします。剛力の思いを伝えられるまで比留子さんは悩んでいました。おそらく裏井が行動した、裏井自身の犠牲の上に成り立つ脱出方法を成功させるためには葉村を信じることが必要不可欠であり、葉村が携帯を手に入れて自分からの連絡に気づいた上ですぐに指定された場所に登場できるか否かは賭けでしかなかったからこそ、葉村を信じて行動するべきか悩んだのでしょう。冷静になって考えてみるとかなり厳しい条件ですよね……しかも、もしも失敗して万が一比留子さんが巨人に殺された時には、剛力京や裏井と同じように葉村は生涯自分を責め続けることになってしまったでしょう。そのリスクを考えると、比留子さんが迷ったのも納得です。それでも、比留子さんは葉村を信じる道を選び取りました。

一方の葉村ですが、葉村は最初から変わることなく「たとえ剣崎比留子が自分自身を諦めても、俺は決して彼女を諦めない」心に決めて動いていました。

2人がお互いを信じて行動したからこそ、迎えることのできたラストでしたね!

また、これまでは自身の身を護るために否応なしにホームズ役をしていた比留子さんでしたが、相棒としての葉村を信じて行動することで、初めて大勢の人を救う未来を掴み取ることができました。葉村は「体質だろうが因縁だろうがどうでもいい。俺にとってましな結果を得るために足掻き続けていたい」と言い、ホームズと生き抜くためにワトソンという手段を選ぶと伝えると、比留子さんも以下のように答えます。

「なら私も、望む未来を掴み取るためにホームズをやろうか」

ついに比留子さんは、自分自身の体質に抗って自分が望む未来を選び取るという意志を持つことができました!これは、今までの彼女とは違い、自分が望む未来を得るためにホームズ役になると葉村に宣言したのです。きっと今回の一件で、葉村というワトソンと一緒なら体質にも因縁にも抗うことが出来るんじゃないかと希望を持つことができたのでしょうね!

二人がやっと相棒になれて、読者としてホッとしました笑

まとめ

いかがでしたか?今回は今村昌弘先生の「兇人邸の殺人」についてまとめさせていただきました。

最後まで読んでいただいてありがとうございました!

剣崎比留子シリーズの他の作品はこちら!

2作目 「魔眼の匣の殺人」

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