新人臨床心理士と心の色が見える少年の物語!彼らは真理を暴くことができるのか?!藤木司の変化について考察してみた!「臨床真理」柚木裕子先生 ※ネタバレ注意

こんにちは、きなこぬこです。

今回は柚木裕子先生の「臨床真理」を読んだ感想・考察についてまとめていきます。

臨床で働いていた時はあまり精神科とは関わることがなく仕事で臨床心理士と関わったことはないのですが、個人的には本当にお世話になりました……笑 人の心に寄り添って支える素敵なお仕事だなと思っています!

今作は第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞しています!


あらすじ

新人臨床心理士の佐久間美帆は、大切な人を亡くし心に深い傷を負った少年、藤木司を担当することになった。初めての担当である彼に誠心誠意向き合おうとする美帆だが、司はなかなか心を開いてくれない。それでも面接を続けていた美帆に司は少しづつ心を許し、司は人の感情が色でわかる「共感覚」を持っていることを打ち明ける。彼は自身が入所していた知的障害者更生施設で妹のように仲良くしていた彩は自殺したのではなく、施設に原因があるのではないかと疑っていた。警察官の友人である栗原とも協力しながら、美帆は司の言葉を信じて事件の真相を調べ始める。

単行本

文庫本

以下はネタバレを含みます。

感想

事件の真相を求める裏には少年の複雑な思いや社会的弱者である障害者に対する偏見が多く含まれていて、読んでいて辛くなる部分もありました。ですが、包み隠すことなく社会の暗部や人間の心の闇を描き出していて非常にリアルに感じました。

この小説の主人公の美帆は、正直なところ担当症例に入れ込みすぎていると思います。このように複雑な立場の少年に対して寄り添うことは必要ですが、ある程度の距離は保たなければならないと思います。

医療者として患者と一線を引くことができずに踏み込みすぎてしまうことは、自身の心を苦しめてしまうこともある、と私は思っています。これは私個人が他人の苦しさを完全に受け止められる程に余裕のある人間ではないからなのですが……

ですが美帆は、司の思いや生き方を全て受け入れた上で、事件を解決に導きました。また、司の思いや行動を変え、導くことができました。本当に心の強い、すごい人だなと思いました!

以下の考察は司のことを中心にまとめていますが、美帆も事件に関わることで成長して強くなっていきました。その姿に、同じように辛い状況にある人たちを支援する仕事をしていた私としては、非常に感銘を受けて元気づけられました!

考察

臨床心理士と人の心が見える少年

臨床心理士とはそもそもどんな職業なのでしょうか?

臨床心理学に基づく知識や技術を用いて、人間の”こころ”の問題にアプローチする”心の専門家”です。

公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会 臨床心理士とは? http://fjcbcp.or.jp/rinshou/about-2/

この一言では分かりにくいかもしれませんが、簡単に言うとこんなお仕事です。気になる方は引用のリンクへ飛べば、臨床心理士について詳しく知ることができます!

対して司の能力は人の声に色が見える、人の感情・思いが目に見えて分かるというものです。

この物語では、障害のある少女が身売りをさせられている事実を、少女の思いを「見る」ことで明らかにしました。

障害者という社会的弱者の届けることの出来なかった思い、「真理」を明るみに出したのです。

彩は失語症で自身の思いを言葉で表すことが困難でした。しかし、その心に向き合おうとする美帆と司、そして周囲の人たちの力が、彼女が巻き込まれていた事件の真相を明らかにしました。

彩が失語症であることは社会における障害者の立場だけでなく、社会的弱者の姿を表しているのではないでしょうか。彼らは実際には言葉を喋って自らの意思を主張をしていますが、マイノリティであるが故にその声が社会全体に届きにくいということを、しゃべることのできない彩の姿で表現しているのではないかと思いました。

藤木司の成長

この物語の主人公の1人である藤木司の成長は、物語において大きな核になっていましたね!ここでは2つの視点から彼の成長についてまとめていきます。

車に関わる場面

物語の序盤、司は病院へ彩が搬送される時に救急車の前に飛び出して車を止め、自分を乗せるように叫びます。ここでの司は、彩に置いていかれる恐怖から衝動的に行動し、その後事故を起こしています。

しかし、物語の終盤では美帆を助けるために正面から栗原に自分をパトカーに乗せるように説得します。この時は美帆を助けなければという焦りがありながらも、落ち着いて一人よがりではなく周囲に協力を求めて行動していました。

どちらも大切な人を助けるために車に乗り込むという行動であることは共通していましたが、司の精神的志向が外的であるか内的であるかが正反対でした。

序盤に救急車の前に飛び出した時は置いていかれる恐怖という、自分自身の恐れに気持ちが向いていましたが、パトカーに同乗することを頼んだ時は美帆を助けるということに気持ちが向いているのです。

司は事件を通じて美帆に自分の能力を肯定してもらうことで、自己中心的で狭い場所だった自身の世界をひろげて周囲の人間を見ることができる程の余裕を持つことができるようになったのです!

嘔吐の頻度の変化

物語の序盤では、司は何かあるとすぐに嘔吐していました。しかし、少しずつ嘔吐の頻度が減り、それに反比例するように言葉数が増えました

これはやはり、美帆が司を全面的に信頼し、根気強く関わり続けたおかげだと思います。

司は嘔吐することで、言葉にできない心の蟠りを外に出していたのだと思います。しかし、少しずつそれだけではいけないことに気づき、自分と向き合い、自分の思いを周囲に発信していくようになります。

彼は、感情の表出方法を、嘔吐ではなく会話へと変えることに成功したのですね!

まとめ

いかがでしたか?今回は柚木裕子先生の「臨床真理」についてまとめさせていただきました。

最後まで読んでいただいてありがとうございました!

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