【「栞と嘘の季節」米澤穂信先生(ネタバレ注意)】栞を持つ少女たちは毒を持った白雪姫!?『夜の姉妹団』はどこで読める?あらすじ・感想・考察をまとめてみた!

ミステリー(国内)

こんにちは、きなこぬこです。今回は米澤穂信先生の「栞と嘘の季節」を読んだ感想・考察についてまとめていきます。

今作は図書委員シリーズ2作目ですね!


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あらすじ

図書委員として放課後の図書室で仕事をしていた堀川次郎と松倉詩門は、返却本に挟まれた栞に毒のあるトリカブトの花がラミネートされているのを発見する。さらには、普段人の入らない校舎裏ではトリカブトが栽培されていることを見つける。栞の持ち主を探していたふたりだったが、生活指導の教師がトリカブトによる毒と思われる症状で倒れる事件が起きる。栞の持ち主として名乗り出た瀬野は本に挟まっていた栞の持ち主ではなかった。しかし、過去に自分の身を護るための『切り札』として友人と共に栞を作成したと話す。みんなが毒を恐れてパニックに陥る中、堀川と松倉と瀬野の三人は栞の謎と黒幕を追う。

以下はネタバレを含みます。

『夜の姉妹団』はどこで読める?

今作ではスティーヴン・ミルハウザー作の『夜の姉妹団』がかなり密接に物語と絡んでおり、読了後は読んでみたくなりますよね!

しかし、調べてみたところ作中で堀川が読んでいた『夜の姉妹団』が収録されているという白水社の短編集『ナイフ投げ師』はhontoで購入できず、amazonにて中古版か値段が高くなっている新品を購入せざるを得ない状況……

そこで他に読む方法がないか調べてみたところ、講談社から出版されている『ガール・イン・ザ・ダーク 少女のためのゴシック文学館』という短編集に『夜の姉妹団』が収録されていることが分かりました!決して安くはない本ですが、上記の本に比べると手に入れやすいかも?

また、こちらは小説ではありませんが『夜の姉妹団』を原作に現代風にアレンジした映画が「The Sisterhood of Night(シスターフッド・オブ・ナイト 夜の姉妹団)」として2016年に公開されています!原作から改変はされているものの、雰囲気を感じることはできるかもしれませんね!


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感想

前作の『本と鍵の季節』に引き続き、堀川と松倉の二人が大活躍する図書委員シリーズの続編が発売されて本当に嬉しく思います!前作は連作短編でしたが、今作は長編なのでより読み応えがありましたね!

前作の最後では松倉が図書室に帰ってこず、見つけたお金を松倉がどう扱ったのか分からない状態になっていましたが、今作で松倉は割の良いバイトを見つけて働いており堀川がバイトのことを訪ねると松倉らしい表情で「金がいるからな」と返している場面はすごく良いですよね!

電車通学ではないのに駅まで一緒に下校して解散したりと、一定の距離を置いて付き合っている堀川と松倉ですが、堀川たちに自分がバイトしていることを明かしたことから、二人の距離が前作よりも少し近づいたように見えました!

前作で二人の性格について考察しましたが、今作でも人を信じることから始める堀川と人を疑うことから始める松倉の正反対な姿勢が描かれていましたね!さらにそこに気の強い美少女・瀬野が参加することで、会話も面白くなっていました。栞を取り戻した後の瀬野さんはきっとうまく事態を収拾したのではないかと思います!

今後もシリーズとして続いてくれるのを楽しみにしています!

考察

それぞれの『嘘』の定義

誰でも少しずつ嘘をつくのだから、ひとしずくでも嘘が混じればすべてが嘘と考えていたら、この世のすべては嘘になる。

上記は瀬野が嘘をついていると言った松倉に対する堀川の言葉です。堀川はある程度の嘘が混ざっていても本当のことも混ざっているのであれば信用しても良いと考えています。そして、瀬野の話を基本的には信じるスタンスをとっています。何なら嘘であってもそんなに気にしていません。

対して、終始瀬野の話を信用しても良いものか疑い続けていた松倉は、本当のことを話していても少しでも嘘が混じればそれらは全て嘘になると考えています。これはもしかすると、松倉のこれまでの背景を考えると、他人を無条件に信じることはできず信じるためにはソースが必要であり、疑う余地があれば信じるに値しないと考えてしまうのではないかと思いました。松倉はおそらく、騙されることに対して非常に恐怖を持っており、信じた結果裏切られることに恐怖を持っているのではないでしょうか。

上記のことを考えると、高校で禁止されているバイト、しかも本来未成年では働けない仕事を堀川と瀬野に打ち明けたことは、松倉にとってはとても勇気が必要なことだったのではないかと思い、尚更エモくなりました!

『切り札』と白雪姫

姉妹団の栞を持つ少女たち=白雪姫

瀬野は友人とトリカブト入りの栞を作った目的を以下のように話しています。

「何があっても、誰にどんなことをされても、お前が生きていられるのはわたしが生かしてやっているなんだと思うために、わたしたちは切り札を持たなきゃいけなかった」

瀬野自身は栞が必要なかったと話していますが、生きることが辛く力で抵抗できない女性にとって、万が一の時に自分を助けてくれる『切り札』を持っているのがどれほど心強いのか……女性である私も少し共感できます。

白雪姫は継母に虐げられて森に逃げ延びるも、毒りんごを食べさせられて仮死状態になってしまいますよね。おそらく、何者かに虐げられる白雪姫は、姉妹団に所属しトリカブトの栞を所持する少女たちです。

しかし姉妹団の少女たちは一方的に虐げられるのではなく、反撃するための『切り札』としての毒を持っています。白雪姫では毒を飲まされてしまいますが、毒を飲まされる前に、すなわち完全に潰されてしまう前に自衛する手段としての『切り札』を持っていることになります。

瀬野≠白雪姫

瀬野は自分が美しいことを認めることが嫌でした。そのため、白雪姫役を辞退して王妃役を勤めました。しかし、彼女の持っている美しさという力が周囲に対して毒になりうることを理解できていませんでした。そのことで白雪姫役の子を苦しめたことを分かっていながらも、自分のせいではないと言い聞かせていました。彼女が認めたくなかった自身の美しさは彼女の武器であり毒であり、ずっと拒絶してきたその美しさを受け入れる決意をしたため「栞はいらない」の発言に繋がっていきます。

美しいと言われて育った瀬野は、周囲の人間が美しいと言って近寄ってくることに恐怖を感じていました。このことから瀬野は白雪姫と言えるかもれません。しかし、瀬野は『切り札』を持たなくても現状を打破しようとする意思の強さを持っています。そのため、この物語内で瀬野は不遇な境遇に耐える白雪姫ではないのです。

まとめ

いかがでしたか?今回は米澤穂信先生の「栞と嘘の季節」についてまとめさせていただきました。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

図書委員シリーズの他の作品はこちら!

1作目 「本と鍵の季節」

コメント

  1. […] […]

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