【「廃遊園地の殺人」斜線堂有紀先生(ネタバレ注意)】あらすじ・感想・考察をまとめてみた!

ミステリー(国内)

こんにちは、きなこぬこです。

今回は斜線堂有紀先生の「廃遊園地の殺人」を読んだ感想・考察についてまとめていきます。

あらすじ

廃墟マニアの眞上は、資産家である十嶋庵が所有する廃遊園地、イリュジオンランドへと正体された。20年前の銃乱射事件で閉園したイリュジオンランドには、眞上の他にも当時の従業員や廃墟マニアが集められる。『宝を見つけたものに譲る』という十嶋からの伝言により宝探しを開始する参加者たちだったが、それぞれに廃遊園地を手に入れたい事情がある様子。廃墟の雰囲気を楽しむため、一人で宿泊用のペンションではなく屋外で眠った眞上は、夜中に歩くマスコットキャラクターの着ぐるみを目撃する。翌朝、着ぐるみを着せられた参加者の一人が柵に串刺しにされた死体が発見される。

以下はネタバレを含みます。

感想

この小説の舞台は廃墟になった遊園地、しかも過去には殺人事件が起こったいわくつきの場所。話が進むにつれ、実は本物の廃墟マニアは主催者と主人公のみであり、他の参加者たちは各々、 廃墟を楽しむ以外の別の目的を抱えてやってきていましたね。クローズドサークルものでは登場人物が絞られるため犯人当てが比較的簡単だと感じてしまいがちですが、今作では参加者たちがそれぞれの秘密を隠そうとして挙動不審になることで、殺人の犯人捜しの難易度が上がり面白かったです!

私には廃墟の魅力は分かりませんが、世の中には少なからず好きな方がいらっしゃるようですね。廃墟になった遊園地といえば、関西出身の私に思いあたるのは奈良ドリームランドです。ホラーは好きですが怖がりなので、廃墟にある独特な不気味な雰囲気が怖くて私は行ってみたいとは思いませんが……

それにしても主人公の多才っぷりには驚きました!コンビニ店員は確かに色んな業務をこなしていますし、結構大変な仕事なんだろうとは思っていましたが……主人公のようにコンビニ店員の経験で人並みならぬ身体能力や洞察力が身につくものなのでしょうか笑 なんでもコンビニのバイトから学んだと説明してしていて、何度も「さすがにそんなはずないやろ!」とツッコんでしまいました笑

作中で使用された傷のある腕を使った入れ代わりトリックは見事でした!事前に凛奈の過去の話の中ではるのの腕には傷があるという情報を与えられていた上に、凛奈が傷のある腕を見てはるののものだと断言したことにより、まんまと引っかかってしました笑

それにしても、作中では大人気だったギャニーちゃん、普通に不気味ですよね……表紙の雰囲気のせいでしょうか?笑

考察

今回は、主人公眞上の並々ならぬ廃墟への思いについて掘り下げていこうかと思います。

最終的にイリュジオンランドを手に入れた眞上でしたが、彼はイリュジオンランドを時の経過と共に風化させることを選択します。

このまま死んでしまえ、と眞上は思う。もう二度と、誰も思い出さないように。

廃墟に「死んでしまえ」という言葉を使うのは印象的ですよね。しかし、眞上が死んでほしいと思ったのは、本当にイリュジオンランドに対してなのでしょうか?

眞上と眞上の父は昔廃墟を巡って生活していました。そして、眞上の父は燕石ヶ丘空中庭園で殺人事件を起こしてしまいます。事件の詳細は不明ですが、眞上は不安な気持ちで一人きりで父親を探すことになり、父が帰ってくることはなかったみたいですね。この体験を考えるとむしろ廃墟が嫌いになっていてもおかしくないと思うのですが……

眞上は招待されたイリュジオンランドで廃墟は一人で楽しむものという持論を展開しています。また、人の気持ちが分からない、だから関わらないとも話しています。眞上は、自分を置いていった父の気持ちが分からず、裏切られたと心のどこかで思っているのではないでしょうか?そして、この経験から他人との間に壁を作ってしまっているのではないかと思いました。

しかし、廃墟を巡りつつ自身のルーツを探ることにこだわっていることから、眞上は自分を置いていった父を憎みつつも、父を完全に嫌いになることもできず、自分と父の唯一の繋がりである廃墟に縛られてしまっているのではないでしょうか?

眞上はイリュジオンランドについて「みんなに愛される遊園地になるはずだったにもかかわらず、今やここは忘れ去られた忌まわしき遺物でしかない」と考えています。世間から注目された重大な事件を起こした父、その父が残した自分。眞上にとって自分自身こそが父の事件の「遺物」であり、廃墟と自分を重ね合わせているのでしょう。だからこそ、殺人事件が起こった過去を持つイリュジオンランドに対して眞上は「共鳴」を感じたのではないでしょうか?

以上のことから、眞上が「このまま死んでしまえ」と思っているのは廃墟となったイリュジオンランドに対してのみではなく、殺人犯である父が遺した遺物である自分と、自分を廃墟に縛る過去に対してなのではないかと考えました。

まとめ

いかがでしたか?今回は斜線堂有紀先生の「廃遊園地の殺人」についてまとめさせていただきました。

最後まで読んでいただいてありがとうございました!

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