こんにちは、きなこぬこです。
今回は知念実希人先生の「天久鷹央の推理カルテⅡ ファントムの病棟」を読んだ感想と、作中に登場する疾患や症状のゆるっとした解説をついてまとめていきます。
天久鷹央のシリーズとしても推理カルテシリーズとしても2作目にあたります!
あらすじ
*甘い毒
トラック運転手の香川昌平は、ストレスから日常的に大量のコーラを飲んでいた。ある日の運転中、突然視界が歪み事故を起こしてしまう。運転をしながら飲んでいたコーラの味がいつもと違うように感じたことから、巷で起こっている清涼飲料への農薬混入事件に巻き込まれたと思ったが、身体からも飲んでいたペットボトル内からも薬物は検出されず……
*吸血鬼症候群
地域の療養型病院で、夜間に輸血パックが盗まれ、中身がなくなった状態で包装だけが見つかるという事件が起こる。鷹央の元にその病院で働く看護師である久保美由紀が事件の調査を依頼するために訪れる。吸血鬼の仕業だという噂が広がっているのを聞き、真相を探るために鷹央は調査に向かう。
*天使の舞い降りる夜
白血病に侵され余命幾ばくもない少年の元に天使が現れたという。少年の隣の病室の3人の男の子が同じ時期に立て続けに急変し、異常事態として病院長である鷹央の叔父、天久大鷲が鷹央に調査を依頼しにやってくる。しかし、鷹央は何故か乗り気ではなく、なかなか急変のあった小児科病棟にも近づかず、ふさぎ込む時間が日に日に増えていく。このままでは統括診断部や鷹央に不利益になってしまうと考え、自分だけでもと調査を開始する小鳥遊であったが……
以下はネタバレを含みます。
感想
今回もキャラクターの個性がそれぞれ立っていて、とても読みやすく面白かったです!
個人的には、「甘い毒」事件の香川の症状は明らかに低血糖時の見られる症状のオンパレードだったので、何で血糖値関連の検査をしっかりせずに退院させたんだろう……って感じではありますが……
現実の医師だったらきっとちゃんと調べてくれるんじゃないかなと思います笑
鷹央は患者さんを看取ったことがあまりなかったんですね。
医療関係者なら必ず通る道なので、鷹央の気持ちはとても理解できます……
自分より年下でなくても、比較的若い患者さんが亡くなる時はやっぱりかなり辛いですね。もちろんどんな患者さんでも辛いのですが……個人的には特にそう感じてしまいます。
自分に何かできるわけではないとはいえ、何かもっとできたことはなかったかなぁとか、少しでも快適に過ごすためのお手伝いはできていたのかなぁとか考えてしまいます。
鷹央もきっと、今回の経験から患者の死ともっとしっかり向き合うことができるようになるんでしょうね。今後そんな成長を描くエピソードが出てきたらとっても胸アツですね……!
ゆるっとした病態解説
甘い毒
低血糖
糖尿病患者さんがなることが多いです。血糖値を下げる薬を多く使用してしまったり、使用するタイミングが不適切だったり、ごはんの量が少なかったりしすぎると、過剰に血糖値が下がってしまい起こります。
実は血糖値は高いよりも低い方が生命に直結して怖いんですよ!
現れる症状としては、頻脈、冷や汗、震え、けいれん、頭痛なんかがあり、ひどくなると香川のように意識を失ってしまいます。
脳に障害が残ってしまうこともあるので、迅速に対応することが求められます。
糖尿病の人なんかは、低血糖対策のためにブドウ糖とか飴とか、すぐに糖をとれるものを日常的に携帯するようにお伝えしていますよ。
低血糖になってしまった時にはとにかく糖を摂取してもらったり、鷹央がしたように高濃度のブドウ糖注射液を静脈内注射したりします。
インスリノーマ
膵臓に腫瘍ができる病気で、インスリンが勝手に分泌されます。
普段はごはんを食べて消化管から糖が吸収されると血糖値が上がり、それに対応するためにインスリンが普段より多めに分泌されます。なので、食後に一時的にインスリンの分泌量は増加するものの、少しすると普段の量に戻ります。身体は賢いですね!
ですが、この病気では無制限にインスリンが垂れ流されてしまうみたいです。そのせいで糖の血中濃度が下がってしまい、血糖値が下がります。こうして低血糖が引き起こされてしまいます。
9割方は良性腫瘍だそうですよ!
症状としては低血糖や肥満が挙げられます。
24~72時間食事を経つ絶食試験を行い、低血糖時は分泌が抑えられるインスリンが血糖値が下がっているにも関わらず分泌され続けるか確認したりします。
吸血鬼症候群
ヘモクロマトーシス
作中で紹介されている通り、体内に過剰に取り込まれた鉄が臓器に沈着してしまうことで異常が生じる疾患です。
作中で出てきた肝臓の他にも、心臓なら心不全になったり、膵臓なら糖尿病になってしまったりします。
今回の田中マツさんは自己免疫性の溶血性貧血でしたね。
溶血性貧血は、何等かの原因で赤血球の寿命が短くなってしまい、身体が赤血球を作らなきゃ!と頑張った結果、体内の鉄をなくなってしまうでおこる貧血です。
貧血に対して輸血をすることはありますが、溶血性貧血の場合は原則輸血禁止です!
というのも、輸血で自分以外の赤血球が加わることにより、さらに溶血(赤血球の破壊)が加速してしまうのだそうですよ。
他の治療と並行して、命に関わるレベルの貧血だったらその場しのぎで輸血することもあるみたいですが、基本的にしてはいけないそうです。
ヘモクロマトーシスに対しては、鷹央が指示している通り、体内の鉄を排除するためのキレート療法を行っていきます。
キレート療法は、血液内の過剰なミネラルを吸着して体外へと排出してくれます。
天使の舞い降りる夜
白血病
有名な病気ですよね。
骨髄の中で血液内の細胞になりきることのできなかった異常な細胞の赤ちゃんたちが増殖して、正常に作られるべき細胞が作られない疾患です。
血液内の細胞が作られることを造血といいますが、それができないために、赤血球が少なくて貧血になったり、血を止めるための血小板がなくて血が止まらなくなったり、免疫機能の要である白血球が少なくて普段は感染しないような病気に感染してしまうような状態になります。
治療法としては抗ガン剤治療や骨髄移植があります。
今回詳しく書きませんが、抗ガン剤治療は本当に辛いもので、髪がなくなるなどの目に見える変化の他にもたくさんの影響が身体にでてきます。からかわれた健太君の気持ちを考えるととても心苦しいですね……
健太君が一時元気になっていた状態を寛解といい、骨髄中の白血病の細胞の割合が一定以下になっていることを言います。これは完治ではなく、あくまで健康に害がない程度まで異常を抑え込めている状態です。いつでも再発リスクがあり、治療は継続して行います。
健太君も再び状態が悪くなってしまってますしね。
若い子供がなってしまうこことが多く、状態が安定しているように見えても再発リスクがある……本当に嫌な病気ですね。
まとめ
いかがでしたか?
今回は知念実希人先生の「天久鷹央の推理カルテⅡ ファントムの病棟」についてまとめさせていただきました。
最後まで読んでいただいてありがとうございました!