【「この本を盗む者は」深緑野分先生(ネタバレ注意)】あらすじ・感想・考察をまとめてみた!

ファンタジー

こんにちは、きなこぬこです。

今回は深緑野分先生の「この本を盗む者は」を読んだ感想・考察についてまとめていきます。

2021年本屋大賞にノミネートされましたね!Twitterでも発売時から多くの人が読んでいらっしゃったのでずっと気になっていました!

あらすじ

本の街で暮らす、本が大嫌いな女子高生、深冬は、父の入院により手のかかる叔母、ひるねの世話をしなくてはならなくなりうんざりしていた。深冬の家は曽祖父の代から巨大な書庫「御倉館」の管理人を務めており、街でも本好きとして有名なお家柄だった。ある日御倉館を訪ねると「この本を盗む者は―」と記された紙切れを見つけてしまう。深冬は御倉館に本泥棒が侵入したときに発動する呪い、ブックカースに閉じ込められてしまう。その世界で出会った不思議な少女、真白から、元の世界に戻るには泥棒を捕まえなければいけないと伝えられる。深冬は真白と共に、泥棒を捜して本の世界を駆け抜けていく。

以下はネタバレを含みます。

感想

本好きのための王道ファンタジーですね!!

私事ですが、仕事の方が忙しくなかなか本を手に取ることのできない日が続いていたのですが……この本を読み終わったときには、本の世界にもっと溺れたい!と思い、次は何を読もうか考えていたくらい、本を好きな気持ちをつついてくる作品です!

呪いにとる不思議な力によって、本の世界に巻き込まれてしまう……という、本好きの人からすると夢のようなシチュエーション!読書家の人だけではなく、漫画やアニメ、ドラマの世界に入り込みたいと思ったことがある人が多いのではないでしょうか?

この物語は、その夢のようなシチュエーションが起こる背景を、ただただ幻想的なものとして描き出すだけではなく、「呪い」という不穏な単語と、その裏側に潜んでいる家族にまつわる秘密を、深冬と一緒に探していく展開は最後までドキドキしました!

お供の真白ちゃんも可愛らしい雰囲気の女の子で、とても素敵でしたね!

この物語は本の世界に入り込むことを通じて深冬が自分と正面から向き合う、深冬のための冒険譚なのではないかと感じました!

ちなみに、いつまでたっても目覚めないひるねおばちゃんは一体いつ起きるんだと思いながら読み進めていました笑

考察

お稲荷様という神様

お稲荷様といえば、狐で有名な神様ですよね。狐とお稲荷様の繋がりは諸説ありはっきりしたものはないらしいですが、一般的には狐は本体ではなく御遣いという立場にあたります。

とはいえ、この作品内では神様本体が狐っぽいので、そういうことで話を進めていきますね笑

お稲荷様は豊穣の神様ですが、狐がねずみなんかの害獣を駆除することも作物を守るイメージに結び付いているらしいです。ねずみといえば泥棒のイメージが連想できますし、本泥棒狩りにお稲荷様が一枚噛んでいるというのは、おもしろい設定ですよね!

泥棒自身や町民たちが狐になってしまったのは、神様が寂しくてみんなを狐にしたという深冬の予想に加えて、みんなを狐にすることで自分の遣いとしてそばに置こうとしたのかな、なんて考えたりしてみました。お稲荷様は見返りを求める神様であるという話もありますが、どうなんでしょうね?笑

なんにせよ、きっかけに問題があることを深冬に見抜かれたことで契約は無効になりましたけどね笑

”煉獄”の真白とひるね

この二人は、いわゆる「イマジナリーフレンド」なのでしょうね!

普通に生きていたらイマジナリーフレンドと遭遇することなんてなかなかないでしょう。だからこそ、真白は普段は作中で”煉獄”と呼ばれる場所にいます。カトリックの宗教的概念ではありますが、ここでいう”煉獄”は真白のいうあの世とこの世の境界という宗教的意味合いよりも、実在はしない想像上の空間といった感じなのかなと感じました。

おばあちゃんが煉獄に捕らえられていた描写があるので、契約のせいであの世に行けずに魂が括り付けられているという解釈もできます。

このことを踏まえると、作中の説明と私のイメージを足した感じの空間なのかなと思います。

そして、ブックカースの発動はこの世側のひるねが煉獄の世界を招き入れる鍵となり、煉獄の世界が現実に侵食してきている現象なのかなと思いました。

根拠としては、ブックカース発動時に少しの間だけだが登場した、煉獄に囚われているはずのおばあちゃんの存在。そして、ひるねの宣言がないとブックカースが発動しないことです。深冬のお父さんが作り出す物語を、想像上の空間である煉獄を現実に引き入れることで実現しているのかな?と考えました。

泥棒を懲らしめるためとはいえ、リスキーすぎますけどね……最初から神様は自分優位の契約を結ぶ気満々だったのでしょうね笑

ラストは結局どういうこと?

ちょっと曖昧な終わり方だったのでいろいろ考えてみたのですが……この終わり方は完全なハッピーエンドではないんじゃないかと思うんですよね。

というのも、本の貸し出しを普通に行っているのにブックカースは発動していません。作中で深冬が認知した上で春田が本を持ち出したはブックカースが発動していることから、ブックカースの呪いが起こらなくなっていることは確かです。

以下は完全に想像なのですが……ラストに関して2つの可能性を考えました。

ひとつ目は、深冬が真白と再会できたのは、実際に出会えたのではなく、元々深冬と一つの存在だった真白が深冬の元に戻ってきたというラストです。真白は元々深冬の作り出した自分の半身であり、深冬が真白を描いた絵をおばあちゃんに取り上げられた下りから、この出来事が深冬が本を嫌いになってしまうきっかけとなっています。

ここで深冬がおばあちゃんに奪われたのは単に真白を描いた絵だけではなく、深冬の本を好きだという気持ちも真白と一緒に奪われてしまったのではないでしょうか。真白は登場時から本が大好きという様子ですしね。ラストでは深冬も本を好んで読むようになっていますし、真白自身が深冬の「本を好き」という気持ちを体現した存在であり、その気持ちが真白が戻ってきたという描写で深冬の元に戻ってきた、という解釈です。

もうひとつの可能性としては、ただの深冬の希望であり、深冬の創作した物語上の出来事であるというラストです。

これは救いがない感じで悲しいのですが……

以上ラストシーンの解釈としては上記の二つが考えられるんじゃないかと思いました!

まとめ

いかがでしたか?今回は深緑野分先生の「この本を盗む者は」についてまとめさせていただきました。

最後まで読んでいただいてありがとうございました!

2021年本屋大賞ノミネート作はこちら!

「52ヘルツのクジラたち」町田そのこ先生

「推し、燃ゆ」宇佐見りん先生

「この本を盗む者は」深緑野分先生

「滅びの前のシャングリラ」凪良ゆう先生

コメント

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